神戸大学広報誌『風』 Vol.20
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いろいろな生き物が助け合って生きている、そのつながりに興味があります。なかでも最も研究に力を入れているのが、光合成をやめるという不思議な進化を遂げた植物です。植物の最大の特徴とも言える光合成をやめるというのはどういう進化だったのかを、他の生き物との関わりの観点から研究しています。私は子供の頃から生き物が好きで、光合成をやめた植物の中で最も有名なギンリョウソウを、奈良の春日山原生林で初めて見ました。それが菌類に寄生していることを高校時代に知り、大学では京都大学の演習林に光合成をやめた植物がいろいろ生えていたので、研究したいと思いました。光合成によって自活しているように       のやりとりです。菌類の本体である菌見える普通の植物も、実は他の生き物と助け合って生きています。特に大事な関係が、地中にいる菌根菌との養分糸は、数百メートルもの広がりをもって地中に張り巡らされているので、大量の水分やリン、窒素などの肥料成分を集めることができます。菌類はそれらを植物に与え、植物はお返しに菌類に光合成産物(炭素化合物)を与えています。WINWINの良い関係に思われますが、物々交換する以上、コスト(与えるもの)が必ず存在します。このため、そのコストをなるべく省略し、一人勝ちしたいという戦略が生まれてくるのです。菌根菌に与えており、非常に高いコストを払っています。植物は自分の成長のために光合成産物を使いたいはずですが、花を咲かせて蜜を出し、花粉を運ぶ昆虫を呼ぶためにも炭素化合物が必要です。だから、コストを省略する進化が生まれうるわけです。 ただ、一足飛びに光合成をやめる進化が起きたわけではなく、最初は光合成は行えるのに、さぼって光合成産物を与えずに、菌からミネラルを一方的にもらう植物が登場したのでしょう。そしてさらに菌類を「だます」ことができるようになり、これまで自分が与えていた炭素化合物も略奪するようになったと考えられます。わかっていません。今わかっているのは、光合成をする植物と菌類の一般的植物は光合成産物のうちの約20%をそこが不思議なところですが、まだな関係においては、互いに審査があるということ、つまり、植物が光合成産物を与えなくなると、菌はリンや窒素を植物に与えるのをやめるということです。その関係を打ち破って、一方的にもらうことが可能になった理由はまだ謎で、この謎をまさに今解明すべく研究しているところです。そうです。ほとんどの植物は菌類なしでは育ちません。マメ科植物と根粒菌という土壌細菌の共生関係は有名ですが、普通の植物も菌根菌と呼ばれる菌類と共生しています。小学校では植物は根毛から水分を吸収すると教えますが、野外の植物に関しては間違いと言ってもよいほどです。根毛をつくることで根が増やせる表面積は微々たるものなので、実際には植物は、根とつながっている菌根菌に主には水や肥料成分を集めてもらっているのです。ただ、こうした菌類は養分をとってくることが主な役割なので、肥料をたくさん投入すると菌類が必要ではなくなり、植物が菌類と共生しなくなることも知られています。自然の力を生かせていないという意味で、今の農業は損をしているかもしれません。菌類の光合成をする代わりに、菌類を「だます」という戦略|先生の主な研究テーマは?|植物にとって光合成をやめる戦略が有効なのですか?|菌類にばれないんですか?同時進行的、複合的な進化を解明する|普通の植物も菌類と共生を?09[ギンリョウソウ]こんな見た目だが、実はツツジの1種。カマドウマが種子の運び手であることを末次教授が世界で初めて突き止めた。[オモトソウ]末次教授が新種として発表。ガラス細工のような美しい花や変わった生態から、日本の植物としては初めて世界の新種トップ10に選定された。[ヒナノボンボリ]絶滅したと考えられていたが新種として発表されてから30年ぶりに末次教授が再発見。不思議な形で大きさはわずか3mmほどである。特集 2 神大 研究ズームアップ[01]Special Topic

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