神戸大学 法学部案内 2022
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 神戸大学法学部で教鞭をとる教員は、国内外で活躍する、各分野を代表する研究者です。学会の理事長や理事を務めていたり、受賞歴のある教員も多く、また、学部全体の科学研究費(国からの競争的研究資金)の獲得率は、全国トップレベルを誇ります。同時に、多くの教員は、公務員試験などの各種国家試験の試験委員、国や地方公共団体の審議会委員などの公職を務めて、社会貢献を行っています。 神戸大学法学部では、教員1名あたり入学定員約3名という全国トップレベルの「教員と学生の距離の近さ」のなかで、最先端の研究に基づく高度な授業を受けることができます。研究を語る(知的財産法)前田 健 教授 私の専門は知的財産法です。知的財産法は、発明や著作物、商標といった「知的財産」を保護する法律です。創作活動を奨励したり、商売に対する信用を維持発展させることができるためには、知的財産権という権利を創ってそれを保護することが必要であると言われています。作り上げた知的な創作物や築き上げた信用を、誰でも自由に利用できるとなると、コストをかけてそのような活動を行うインセンティブを失ってしまうからです。もし知的財産権がないと、社会にとって必要なそれらの活動が行われなくなってしまいます。 ただ、かといって知的財産をただ保護すれば問題が解決するわけではありません。知的な創作物は利用者に利用されて初めてその価値を発揮するといえますし、近代物理学の祖であるニュートンは「私が遠くを見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからだ」と語ったと言われるように、そもそも知的な創作活動は、過去の膨大な知的創作物を下敷きにして発展していくものです。創作活動の保護とその成果の活用との間の適切なバランスをとる必要があります。しかも、情報通信技術など科学技術の急速な発展、取引環境の劇的な変化によって、知的財産法を取り巻く状況は大きく変わってきています。既存の法学にとどまらず、幅広い視野と教養が問題の解決にはかかせません。それだけに大変に取り組みがいのあるテーマだと思います。研究を語る(民法)瀬戸口祐基 准教授 私は民法を研究しています。民法は、所有権、契約、婚姻・親子、相続といった、社会の基本となるルールを定める法律です。この民法を対象とするのが、民法学と呼ばれる学問分野です。そして、民法が定める内容自体が広範であることも影響して、民法学は、その目的と方法のいずれについても、多様性を内に抱えるものとなっています。そうした中、私自身は、主として、民法に関係する複数のルールの相互関係を明らかにすることを目的として、フランスの民法学を参照するという方法により、研究を進めてきました。 民法は社会の基本ルールを定めるものであるため、これに関係する個別ルールの数は膨大であり、また、社会の変化に応じて個々のルールの内容が変化することもあります。このため、複数のルールの間での整合性をどのようにして確保すべきかが問題となることが少なくありません。そして、日本の民法がフランスの民法から影響を受けて制定されたものであることもあって、日本の民法に関係する複数のルールどうしの関係性を考えるうえで、フランスの民法学は少なからぬ示唆を与えてくれます。 数が多く内容も流動的な民法に関係する様々なルールの間の関係性を、外国における動向にも目を向けながら研究することは、大変難しいことです。しかし、そのことを通じてこの社会に対する理解を深められることは、民法研究の大きな魅力のひとつであると感じています。神戸大学法学部の特長① 優れた研究力33

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