神戸大学 理学部・大学院理学研究科 2021
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研究内容有機化学講座有機反応化学:役に立つ有機化合物をつくり出す担当教員:林 昌彦、松原亮介 人が健やかで快適な生活を送るには、医薬品、繊維、電子材料などの有機物質が欠かせません。これらを短段階で合成するには、これまでにない新しい反応を開拓する必要があります。私たちは、独自に設計した触媒を用いて、医薬品合成で重要となる光学活性化合物を効率的につくる不斉触媒反応や環境にやさしい酸化反応などを開発する研究を行っています。また、新規なπ電子系化合物の開発も行っています。生命分子化学:タンパク質の構造と機能担当教員:田村厚夫、茶谷絵理、木村哲就 生命は、遺伝子に含まれる情報にしたがってタンパク質がつくられるところから始まりますが、タンパク質がどのようにして立体構造を形成し、機能を発揮するのか、実はよくわかっていません。この基本的な課題の解決に向けて、私たちは、膜タンパク質などさまざまなタンパク質の構造と機能や、アルツハイマー病発症の際に構造形成過程の誤りによって凝集する機構を調べています。さらに、新しい構造や機能をもったタンパク質を自らデザインしてつくり出す研究に取り組んでいます。有機分子機能: 巨大環状分子と超分子集合体を使った 新たなナノサイエンス担当教員:津田明彦 化学者は“自然界に存在しない新しい分子”をデザインして創ることができます。フラスコの中で生み出されるそれらの分子は、科学的な芸術作品と見なしてもよいでしょう。分子はその組成や構造によって性質が大きく異なります。すなわち、個性があります。私たちは、合成化学的なアプローチにより、巨大で美しい構造を持つ環状化合物や分子集合体の開発を行い、それぞれに秘められた未知の現象や機能の探索を行っています。構造解析化学連携講座 (大学院教育―博士課程前期後期課程)シンクロトロン放射光が拓く材料科学(公財)高輝度光科学研究センター担当教員:杉本邦久、関澤央輝 加速器によって光の速度まで加速された電子が放射する強力なシンクロトロン放射光X線を使うことにより、機能性材料の微小・微量な単結晶・粉末の回折像から構造と物性の相関を解明することができます。また、X線分光法を用いれば、触媒、電池、生体、環境物質中などに含まれる微量な元素の化学状態や局所構造を解析することもできます。さらに、X線顕微鏡と組み合わせることにより2次元/3次元の化学状態・構造解析も可能です。シンクロトロン放射光による私達の研究では、機能や物性と関係の深い構造や電子状態を直接的に可視化する先端的な計測装置や先駆的な解析手法の開発を行っています。理論生物化学連携講座 (大学院教育―博士課程前期後期課程)理論化学:量子論に基づいた分子の世界の解明(国研)理化学研究所担当教員:中嶋隆人 私たちは、大規模で複雑な分子系に対する量子化学計算を実現するため、量子化学理論のブレークスルーを達成すると共に、量子化学計算ソフトウェア「NTChem」を開発しています。スーパーコンピュータ「富岳」を使うことで、生体分子等における化学反応や機能発現のメカニズムを分子レベルで解き明かしたり、インフォマティクスを併用して生分解性ポリマー等の材料設計をしたりしています。リチウムイオン電池の充放電過程の反応の進行の様子卒業・修了後の進路 ここ数年の化学科の卒業生の進路は、8~9割が大学院博士前期課程(修士課程)に進学して研究を続けています。そのほとんどが神戸大学大学院博士前期課程化学専攻への進学ですが、他大学の博士前期課程へ進学する人もいます。約1割が民間企業へ就職しています。 博士前期課程(修士課程)修了後は、約8割が化学、薬品、香料、材料、電機、機械、印刷、情報などの様々な分野の民間企業に就職しています。1~2割が神戸大学大学院博士後期課程(博士課程)に進学しています。博士後期課程修了後は、大学や研究所(海外も含む)で博士研究員(ポスドク)になる人が多いですが、企業に就職する人もいます。大学院博士課程前期課程(修士)修了生の進路(2018~2020年度)本学大学院7民間企業   79その他    9他大学大学院 1教員・公務員学部卒業生の進路(2018~2020年度)本学大学院 65民間企業   15その他    3他大学大学院 6教員・公務員74有機合成実験タンパク質の立体構造渦の中でねじれて配向する超分子ナノファイバー「京」での「NTChem」の並列性能23

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