神戸大学 大学案内
26/72

人類はその歴史の中で、言語・哲学・文学・芸術といったさまざまな“文化”を作り上げてきました。文化を研究対象とする人文学の出発点は、人間はその歴史の中でなんと複雑なものを作り上げてきたのだろうかという驚きであり、それはどのように創造され受け継がれてきたのだろうかという好奇心です。文学部人文学科の5講座では、個々の学生がもつこのような素朴な驚きや好奇心を学問的に深めていきます。哲学講座・文学講座・史学講座がカバーする古典的学問領域では、自分の驚き・好奇心を共有する多くの知的先人がいたことを発見し、その学問的意義を理解します。知識システム講座・社会文化講座では、調査・実験といった研究手法、コンピュータを使ったデータ解析を通じて、素朴な驚き・好奇心を新たな文化の創造につなげていきます。 哲学専修古代ギリシア哲学から現代哲学にまで至る、さまざまな時代と地域の哲学を専門とするスタッフによって、体系的な教育が行われます。哲学の基礎概念や方法論を修得し、原書を読む読解能力を固めた上で、演習や論文指導等を少人数教育で行います。また生命・医療、科学技術・環境等に関する現代の哲学・倫理学を学ぶことができます。国文学専修国語学、国文学の両分野からなり、古典から近現代までの日本文学と日本語の研究を行います。自身が置かれている歴史的・文化的位置を確かめたい学生にとっては最適のコースです。中国文学専修中国語圏の文学や思想を通じて中国文化への理解を深めます。演習では古典語・現代語のいずれにおいても、記述が行われた背景を考えながら文意を理解していきます。英米文学専修イギリスとアメリカを中心とした英語圏の文学の多様なジャンル―小説、演劇、詩などの純文学からファンタジー、SF、ミステリーなどの大衆文学まで―をより深く研究したい人はもちろん、イギリスやアメリカなどの英語圏の文化・芸術(音楽、映画、パフォーマンスなど)を学びたい人、将来のために英語力を高めたい人など、皆さんの色々な興味と多様な学びのニーズに応えます。ドイツ文学専修ドイツをはじめ、オーストリアやスイスなどのドイツ語圏の文学・文化・思想を幅広く学び、研究する専修です。時代的、地域的、そして作家や詩人の個人史的な背景を勘案しながら、ひとつひとつの言葉を丁寧に解釈することで、ドイツ語を使って生み出されてきた多様な文学作品を読み解いていきます。フランス文学専修フランス文学は流派や思潮の違いを超えて、「人間」とは何か、「言語」とは何かを真剣に考え、問い続けてきました。こうして人の精神形成にまで影響を与えたフランス文学に多様な角度からアプローチします。文学部Faculty of Letters言葉を通して人間について考える私が所属している言語学専修では、言語の様々な側面(音声、文法、意味など)から言語の法則性・体系性について研究しています。私の研究対象は、言葉の意味ですが、意味はしばしば曖昧になることがあります。例えば、「とても高い車は買えない」という文は、「とても」が「高い」を修飾している読みと、「買えない」を修飾している読みとで曖昧ですが、両者は異なる状況を表しています。前者は、「高い車」は買えることを暗に伝えていますが、後者は、「高い車」は買えないことを強調しています。また、言葉の意味は、相互理解の問題とも深く関わっています。例えば、Aさんが「この本は面白い」と言い、Bさんは「この本は面白くない」と言った場合、両者は全く正反対のことを言っていますが、どちらも「正しい」ことを言っています。これは「間違いのない不一致」と呼ばれ、程度表現によく見られる現象ですが、言葉の意味の本質に関わる重要な問題だと考えられます。演習では、論文を精読し、理論や研究手法を学ぶと共に、各自が独自のテーマで研究し、卒論としてまとめることを目指します。文学部には、言語学のほかに、哲学、文学、歴史学、心理学、芸術学、社会学、美術史学、地理学など全体で15の専修がありますが、専修の選択は入学後1年間かけてじっくり考えることができます。様々な分野に接することを通して、自分の新たな可能性に気づくことができると思います。文学部 准教授澤田 治古典に通じて文化を深く理解し、新たな文化を創造する人材を育成哲学講座文学講座人文学科教員メッセージ文学部Kobe University24

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る