神戸大学 大学案内
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先端的な研究・教育をめざし、その拠点となることを目標とする神戸大学の全体の方針を受け、永年にわたる法学・政治学等の学問的な活動によって今日まで培ってきた蓄積と知的資産を活用して、幅広い法学・政治学的素養を備え、高度な専門的要請に応じられる人材の育成をめざしています。また、世界有数の経済力を有する日本が、今後ますます国際的責任を果たす必要性と使命に応えていくため、国際的な領域において法学・政治学的な知識を活かし活躍することができるよう、自ら考える主体性を育みます。一社会人として社会の実態に呼応し、自己の位置を直視し、客観的な分析能力・判断能力をもつとともに、社会の改善と変革に取り組む姿勢をも持てるよう、広い視野と深い理解を提供しつつ、可能性と才能が開花するよう助力します。法学部Faculty of Law複眼的な思考の勧め法学部における学習の内容は、様々な具体的法律の解釈に加え、法の背後にある思想や、法の形成・運用を実質的に規定する政治のあり方など、非常に幅広い内容を含んでいます。このように、法学部では、学習対象の幅広さの点からみても、幅広い複眼的な思考を養成することが大切ですが、更に別の意味でも複眼的な思考は重要です。それは、法や政治が、社会内の多様な人間の立場や利益を前提として、人々の間に妥協や協力関係を成立させる役割を果たしているからです。言いかえれば、法や政治の問題に関して、社会の万人が一致して支持する意見というのはほとんど存在せず、人々は常にそうした問題に関して異なった立場を維持し続けることが多いのです。このように、法や政治の学習に際して複眼的な思考が重要なことは、政治学の祖として名高いアリストテレス以来、既に幾度となく指摘されたところです。しかし、こうした複眼的思考の意義は、特に今日の急速なグローバル化の中で、ますます高まってきています。というのも、グローバル化の進んだ社会では、これまで以上に多様な文化的・歴史的背景を持った人間が、多様な意見や利益を主張する機会が確実に増えており、その中で人々の妥協点を探り、人々の共存を図ることが法や政治には求められている。だからこそ、これからの法学・政治学の学習には、より幅広い視野に立って未知の文化や人々を積極的に理解しようとする、強い好奇心とバイタリティーが求められているのです。社会科学の素養と法的見識力で社会に呼応法律学科教員メッセージ法律の条文は一般的な形で書かれているので、具体的な事件の解決方法として、そのまま当てはまるという訳ではありません。時には複数の解決方法が導かれる場合もあります。また、法律ができてから時間が経った場合には、社会情勢の変化で、予想しなかった事態が発生することもあります。法律は、いわゆる六法全書の中にあるのではなく、生きたかたちで社会を機能させているのです。事件を解決するのに、どのような方法が最も適切かを考え、法律の解釈を行うのが実定法学です。知的所有権、セクシャル・ハラスメント、医療事故といった具体的な事例も取り上げつつ、学び考えていきます。他方基礎法学とは、哲学、歴史学、社会学、経済学等の方法を用いて、法の存立根拠、法的価値、法の歴史、法と社会現象との関連などを研究する分野です。憲法・民法・刑法等といった実定法学が、個別の紛争や事件に即した法的知識や問題解決能力を学ぶのに対して、基礎法学は、こうした実定法学の基礎ともなりうるような知識と視野を豊かにしようとするものです。実定法学・基礎法学政治学・国際関係論は、国内外における政治のあり方を問う学問です。私たちが生きている地域・国・世界はさまざまな問題に直面していますが、それらに対処していくためには、人々の利害を調整して、望ましい解決策を実施していく政治が求められていきます。「法」の制定過程においては、公共的な問題について考え、多様な意見を主張しあい、議論を重ねて、最終的には一定の決定を下す「政治」の働きがあります。この「政治」の領域で、何がどのように決定されてきたか、これからどんな決定がなされるべきかを考えていくのが政治学・国際関係論のテーマです。政治学の分野では、政治とは何か、民主主義とは何かといった根本的・原理的な問いや、議会や官僚制といった制度の分析などに加えて規制緩和論やジェンダーといった時事的な問題まで、より広範なテーマを取り扱います。国際関係論の分野でも、国家という枠組みを前提とする外交の問題だけでなく、環境問題のように私たち一人ひとりに直接関係する「地球環境問題群」というテーマも対象とします。政治学・国際関係論法学部 教授飯田 文雄法学部Kobe University28

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