題に対してどうすればよいか(How)を議論する「現状における課題解決に重きを置いた教育改革」をしてきたように思います。しかし、これからは「将来のありたい姿をより強く意識した教育改革」が必要であると実感しています。私も、教育担当理事になってからの2年間は、現状の組織や課題の整理に悪戦苦闘してきましたが、今後は構成員全体で「どんな人材を育てたいのか」というコンセンサスづくりをする場を設け、大学が進むベクトルを全員で理解・共有することが、よりよい教育づくりの近道であると考えています。一方で、本学は文理の均衡がとれた多様性のある総合大学だからこそ、各自の理想像が少しずつ異なることが、構成員全体の合意形成をより難しくしてきた一因と感じています。例えば、私のモノの見方や施策を評価する座標軸は、長く在籍した工学部の視点からになることが多いのですが、いざ理事として大学全体を見るときには、各学問の特性によって見える視点や認識が大きく異なることに気付かされ、未だに驚くことがあります。だからこそ、全体の将来ビジョンを形成し、教育体制を拡充する上では、「学生本位」に立つことを大切にしています。私自身、実は教育者・研究者というよりは「エンジニア」の側面が強いと思っているのですが、学生に「エンジニアリング教育」をする際には、知識の伝授だけではなく、これまでの学びとの相関性や他分野との類似に気付き、未知の現象を予測できる力を身につけてもらえるように意識しています。大学における教養教育も同じで、学生にとって直接的に自分の専門には結び付かないかもしれないけれど、他分野を含めて間接的に役立つ知識の種を撒く、非常に意味のあることだと考えています。憧れをはぐくむ大学にしたいですね。入学前から卒業後まで学生に憧れを持ち続けてもらえる大学にするには、構成員それぞれが人格込みで一流を目指して努力する必要があります。私は、大学が対面で教育をする意義は、教員が自分なりの「一流」に向かってたゆまず努力をする姿を見せることだと考えています。そうでなければ極端な話、YouTubeで授業動画を流すだけでも■色ないですからね。かくいう私も、師匠の片岡先生に憧れて本学で学びはじめた構成員の一人です。私の研究分野「テイラー渦流」でトップクラスを走っていた片岡先生を見て、当時学生だった自分は、かっこいいな、こんな風になりたいな、と思ったものです。このように、学生が知識だけではなく、その応用力や人格、人と関わりながらイノベーションする力をつけていくためには、大学は憧れや模範となる人材を備えて、一流に向かって努力できる風土づくりを後押しする必要があるのです。神戸大学が構成員全体の包括的な人間成長の場となり、一人ひとりが自主的に、大学教育のためにやるべきこと・やらなくてよいことの取捨選択ができるようになればと願っています。大学教育推進機構 HPhttp://www.iphe.kobe-u.ac.jp/16目指すべき大学像と構成員に望むこと
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