本学では、近年急速に変化している社会情勢を踏まえ、地域社会や企業から求められる実践的人材や将来の日本の研究力を支える国際的に卓越した基礎科学の研究者の育成を強力に推進しています。2022年4月には、国際的に卓越した学術研究を推進するとともに、本学の研究力の一層の向上に資することを目的として、高等学術研究院が設置されました。高等学術研究院では特に国際的に優れた業績を有する若手の教員を准教授または教授に早期に昇任させる「高等学術研究院卓越准教授・教授制度」を設けており、今後も本学において研究を行うインセンティブとするとともに、部局運営業務を免除することにより研究・教育に専念させ、一層の研究成果創出を促します。これまでに9名の優れた若手研究者が卓越教員に採択されており、引き続き、国際的に優れた若手教員の育成・確保に取り組んでいきます。将来的には、これらの教員の卓越した研究が「先端的異分野共創研究プロジェクト」に応募・採択され、さらにはデジタルバイオ・ライフサイエンスリサーチパーク推進機構の拠点を形成するような優れた研究成果を生み出すことが期待されます。ニホンリスが毒キノコであるベニテングタケを好んで食べたり、ナナフシという昆虫が鳥を乗り物として利用したりなど、動植物は人々が想像すらしなかった生態を持っています。理学研究科では、彼らの知られざる生態を明らかにすべく、絶滅危惧種の植物を中心に、広範な生物の研究を進めています。本研究の特長は、植物愛好家の方々とネットワークを構築していること。プロ・アマチュアの垣根なく植物の不思議について議論しており、現在では50名を超える方々と共同研究を推進しています。定期的に行っているフィールドワークの調査結果は、環境省や都道府県のレッドリスト、国立公園の指定植物の選定、国立科学博物館の植物データベースを構築する上で重要な役割を果たしています。さらに、調査を通して、新種の植物や日本新産種を多数発見。多くの植物種が未だ新種として認識されないまま絶滅の危機に■している現在、新種であることが分かって初めて、保全すべき対象かどうかを判断し、認知できます。生物多様性の過小評価を防ぐとともに、生態や進化などの多角的な視点で研究を行う重要性を知らしめている点が、本研究の大きな意義です。今後も、植物ならびに関わりあう幅広い生物間相互作用を研究している専門性を生かし、絶滅危惧植物の保全などの環境問題に取り組んでいきます。27国際的に卓越した学術研究の推進生物多様性を守り続けるために末次 健司 教授(理学研究科/高等学術研究院 卓越教授)TOPICS「知」の創出
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