神戸大学 統合報告書 2023
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「知」の創出GoogleやAppleのようなビッグテック企業や、Airbnbやメルカリのようなシェアリングエコノミー企業にも利用されている、プラットフォームというビジネスモデルの研究に取り組み、理解の深化に貢献しています。本研究は、プラットフォームの意思決定を手助けするための経営学的な視点だけでなく、プラットフォームの行動・インセンティブを理解した上で利用者や社会運動は、健康の実現に大切な生活習慣の1つでありながら、つい「三日坊主」になってしまう行動の代表格です。厚生労働省の調査によると、ここ20年間、日本の運動習慣者の割合は、横ばいのままです。人々の健康実現のためには、運動習慣が形成される仕組みを理解し、運動習慣を効果的に支援する方法論を見出す研究が必要です。そこで高齢者を主対象に、運動習慣が形成される仕組みや、定着のために効果的な支援に関する研究を行っています。本研究の特長は、様々な領域の手法を取り入れながら研究を進めている点です。運動習慣には、本人の気持ちや努力だけでなく、周りの環境や社会関係など、様々な要因が複雑に関与していると考えられており、多角的なアプローチがより効果的です。また私は、全体の余剰を守るための経済学および競争政策的な視点からも進められてきました。その研究成果は、経済学・経営学・競争法など、社会科学の幅広い分野に貢献できる可能性を秘めています。ビッグテック企業に対する規制の必要性が世界中で活発に議論されている近年では、特に競争政策への貢献を目指して研究を実施し、プラットフォームに対する競争政策を議論する上で有益な成果が得られました。現在では、公正取引委員会競争政策研究センターの客員研究員、経済産業省主催のプラットフォーム・エコノミクス研究会のメンバー、およびプラットフォームモニタリング会合の委員など、省庁での取り組みにも参加しており、学術的な面だけでなく政策関与の面でも、社会貢献につながる研究を目指して取り組んでいます。当面は、現在の研究体制を維持しながら、より多くの学術的貢献を目指す予定です。加えて、省庁での取り組みや企業との連携等、社会貢献的な分野にも研究を広げていきつつ、人材育成にも力を入れていきたいと考えています。2022年よりウェルビーイング先端研究センターも兼任していますが、ウェルビーイングの観点から運動を捉えると、違う景色が見えてきます。例えば、運動嫌いの人にとって、健康のために嫌いな運動を行うことは、その人にとって本当に幸せだといえるのでしょうか。研究結果としても、運動に対する意気込みよりも、運動を好きであることの方が、継続の成否に影響しているというデータがあります。今後は、人々の健康とウェルビーイングの両立を目指して、運動習慣の形成と支援に関する研究を進めたいと考えています。28国際的なプラットフォーム研究の推進善如 悠介 教授(経営学研究科/高等学術研究院 卓越教授)高齢者の運動習慣の形成と支援に関する研究 原田 和弘 教授(人間発達環境学研究科・ウェルビーイング先端研究センター/高等学術研究院 卓越教授)TOPICSTOPICS

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