神戸大学は1902(明治35)年に創立され、本年(2022年)には120周年を迎える歴史ある大学です。現在、10学部15研究科、学生総数約16,000名からなる総合大学として日本でも有数の研究・教育機関であり、「学理と実際の調和」を理念として、進取と自由の精神がみなぎる学府です。神戸大学は、文系・理系のバランスが良く、ともに優れた業績をあげています。また、文系・理系の垣根が低く、文理融合の研究が展開されていることもその特徴の一つであり、新たな学問領域を生み出す潜在的な能力が高い大学です。 保健学研究科は、大学院前期課程(各学年64名)、後期課程(各学年25名)の定員があり、我が国でも有数な規模と研究推進大学としての質の高さを誇っています。専門領域としては、看護学領域、病態解析学領域、リハビリテーション科学領域の3基幹領域と、融合領域のパブリックヘルス領域から構成されています。各領域では、専門的知識・能力とともに創造性に富んだ研究者としての資質を養うように心がけています。さらに、2016(平成28)年度からは大学院に助産師および保健師の教育課程が開設され、ハイリスク妊娠・分娩の管理や保健行政・国際機関で活躍できる医療専門職の養成を行います。このように保健学研究科では、高度専門人材・研究者や将来教員として働く指導的人材の養成を推進しています。 神戸大学は、世界中の様々な大学と交流を持っています。保健学研究科においても、2012(平成24)年度から4年間実施した世界展開力強化事業においては、ASEAN諸国トップ5大学との連携の下、大学院生の短期・長期における交換留学を実施し、アジア地域における次世代保健学グローバルリーダーの育成に努めました。2017(平成29)年度からは、環太平洋諸国との連携・協働による次世代グローバルヘルスリーダー育成プログラムを実施してきました。英語教育に関しては、英語のみで大学院課程を修了できるInternational Course for Health Sciences(ICHS)コースを設置しており、グローバル化への対応を進めています。現在、アジア諸国では、今後到来する少子高齢化への対策が必要とされていますが、保健学研究科では2016(平成28)年度にアジア健康科学フロンティアセンターを設立し、アジア諸国を見据えて、感染症対策、母子保健、生活習慣病対策、超高齢化対策など包括的な問題解決に取り組んでいます。日本における超高齢社会の経験を踏まえて、海外大学・研究機関、WHOなどの国際機関との連携により構築された共同研究ネットワークを活用し、アジア諸国の保健衛生課題に取り組んでいきたいと考えています。 医療分野の中では、工学分野・情報科学分野と連携したICTを活用した健康管理システムの構築や医療機器開発が強く望まれています。2013(平成25)年度からは、独立行政法人情報通信機構との間で連携講座を設立し、共同研究を進めています。また、2021(令和3)年度からは神戸大学大学院の複数研究科(保健学研究科、医学研究科、工学研究科など)にまたがって横断的に実施する医工創成の教育プログラムとして、デジタル医工創成学コースを開設しました。さらに、企業等との共同研究開発事業も精力的に実施しています。神戸大学では、2018(平成30)年度より超高齢社会において喫緊の課題となっている認知症に焦点を当てて、文理融合のオール神戸大学体制で「認知症予防プロジェクト」を開始し、2020(令和2)年度には保健学研究科に認知症予防推進センターを設立しました。新型コロナウイルス感染症による困難な状況を乗り越え、多元化・複雑化・流動化するポストコロナ時代を見据えた、より学際的で異分野共創型の新研究領域をさらに開拓し、新しい時代を切り拓いていく人材を育成していきたいと考えています。秋末 敏宏
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