神戸大学 統合報告書 2024
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長期ビジョン「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」の実現に向け、学長のリーダーシップの下で先進的かつ世界最高水準の異分野共創研究を推進するために、学術研究推進機構内に「異分野共創研究企画・創出委員会」(以下「委員会」という。)及び「先端的異分野共創研究推進室」(以下「室」という。)を設置しています。「委員会」は、本学の第一線で活躍している研究者が委員となり、学内の研究シーズを元に異分野共創研究のマッチングを行い、新たな「研究ユニット」を企画・創出しています。研究ユニットは、「ゼニゴケ産業利用(機能性野菜と有用物質生産)のためのプラットフォーム開発」など2024年8月1日現在で9件が創出されており、特に若手研究者を中心に異分野共創研究を進めています。今後、創出された研究ユニットが本学のフラッグシップ研究として先端的異分野共創研究神戸雰囲気学研究所(KOIAS)は、雰囲気という学術的に難解ながらも身近なテーマに取り組むため、2022年に設立されました。哲学や文学、心理学、建築学など多分野にわたる国際的な共同研究を通じて、雰囲気の包括的な研究を進め、新たな学術領域を開拓しています。これまでに、スロベニアや台湾などでシンポジウムを共催し、研究ネットワークをひろげてきました。雰囲気という現象が等閑視されてきた従来のアカデミアにおいて、雰囲気を学術テーマとして確立すること自体が大きな課題です。近代思想は、人間とは主体的に意思決定できる個人だという見方を前提としてきました。この考え方を批判し、主体をとりまく「雰囲気」の重要性を問い直す動きが、世界各地で展開しつつあります。しかし関連研究者は各国に散らばっており、今まさに、文化横断的で分野横断的な研究プラットフォームの構築が切望されています。「神戸雰囲気学研究所」はこうした状況をふまえ、国際的なネットワーク構築と包括的な新学術領域展開を目指すものです。現在、KOIASを中心とした世界雰囲気学会の設立、および新学術領域の土台となる基礎概念の整備の二点を中心に取り組みを進めています。将来的には、雰囲気を中心とした新しい研究フレームワークを構築し、教育学や社会科学、生命・医学系など他学系との協働を目指しています。社会のDX、VRやメタバースなどバーチャルな共同性の出現、感染症による物理的共生の限定などといった社会的激変と相まって、雰囲気をめぐる議論はますますアクチュアルかつ重要になりつつあります。本プロジェクトにより、こうした今日的状況に立ち向かうための基盤を生み出したいと考えています。プロジェクトの候補となるよう支援や評価を行っていきます。本取り組みは、新たな研究を生み出す効果はもちろんのこと、異分野に触れることで研究者自身の成長を促す場にもなっています。「室」は、学内公募により「先端的異分野共創研究プロジェクト」を選定し、将来、デジタルバイオ・ライフサイエンスリサーチパーク推進機構の拠点を形成するような、本学のフラッグシップとなり得る研究と人材を育成しています。2024年度には新たに『異分野共創研究による雰囲気学の国際展開』『ゲノム編集によるウェルネスプランツの異分野共創研究』の2件を採択し、合計4件のプロジェクトが活動しています。特に『異分野共創研究による雰囲気学の国際展開』は前述の委員会により創出された研究ユニット(前述)から先端的異分野共創研究プロジェクトに採択された初めてのケースとなりました。27「知」の創出新学術領域「雰囲気学」の創出久山 雄甫 准教授(人文学研究科)異分野間連携による傑出した研究成果の創出

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