神戸大学 統合報告書 2024
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本学では、近年急速に変化している社会情勢を踏まえ、地域社会や企業から求められる実践的人材や将来の日本の研究力を支える国際的に卓越した基礎科学の研究者の育成を強力に推進しています。これを実現するための学内制度として、特に若手研究者の育成を目的とした様々な制度を用意し、キャリアアップ形成の支援を行っています。高等学術研究院では、特に国際的に優れた業績を有する若手の教員を准教授または教授に早期に昇任させる「高等学術研究院卓越准教授・教授制度」を設けており、優秀な若手研究者が今後も本学において研究を行うインセンティブとするとともに、部局運営業務を免除することにより研究・教育に専念させ、一層の研究成果創出を促します。本制度ではこれまでに14名が採択され、際立った成果を上げています。今回ご紹介する工学研究科杉本泰日本を含めた3カ国において、パンデミックや異常気象、交通渋滞といったリスクシナリオの下での消費者の外出行動を調査し、アンケート結果を分析しています。この研究では、外出目的に対する消費者の行動が、リスクの種類や国によってどのように異なるかを明らかにしました。例えば、日本の消費者はリスクに対する反応がイギリスやドイツに比べて弱い傾向があることが分かりました。緊急時の交通需要をいかにコントロールするかという問題は交通マネジメントにおいて重要な課題です。この課題に対処するためには、交通需要者(消費者)が様々なリスクに対してどのように交通行動を変化させるのか、需要者のどのような特性に働きかけた施策が必要かを明らかにする必要があります。本研究は、緊急時における交通需要の管理に役立つ重要な知見を提供しています。これにより、リスクに応じた適切な施策の実施が期待でき、社会全体の安定性を維持するためのインフラ管理にも応用可能な示唆を得ることができます。今後は、より詳細な外出目的の分類や消費者の選好要因を含めた分析を進め、消費者自身が自ら行動をコントロールすることに役立つ施策について特に注目して議論を深める予定です。准教授(2022年度 卓越准教授採択)は、2023年度に文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました。また、将来本学の研究リーダーとしての活躍が期待できるような卓越した業績を挙げた若手研究者を表彰する制度である「優秀若手研究者賞」では、毎年、各学系から選りすぐられた優秀な若手研究者を表彰するとともに、併せて研究費の授与も行っています。今回ご紹介する経営学研究科中村絵理教授は2023年度に本賞を授与されたほか、2022年度には科学技術の若手研究者の登竜門と言われる科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業「さきがけ」にも採択されています。また、卓越した研究成果の社会実装を促進させるため、大学発のスタートアップの起業支援にも注力しています。今回ご紹介する理学研究科津田明彦准教授は、「光オンデマンドケミカル株式会社」を設立し、革新的な環境問題の解決を目指しています。29「知」の創出緊急時の安定的な交通利用を目指して中村 絵理 教授(経営学研究科)P2優れた若手研究者への支援や卓越した研究成果の社会実装の推進

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