神戸大学広報誌『風』 Vol.22
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Action 1Action2ESDプラットフォームWILLなごぶい 12 神戸大学広報誌「風」Vol. 22(左)農学研究科博士課程前期課程2年 佐藤 杏香さん(右)国際人間科学部4年 白根 愛子さん 神戸大学の任意団体「ESDプラットフォームWILL」は、持続可能な開発のための教育(ESD)の推進を目指し、災害復興や福祉、農業などの現場でボランティア活動を行っている。1年生の時から活動に関わる佐藤杏香さん、白根愛子さんは、これまでの経験を生かして今、事務局メンバーの“要”として力を尽くす。 WILLは学生サークルではなく、大学の関連プロジェクトとも異なる。ユース主体の組織で「神戸大学の学生が一番多いのですが、卒業生や高校生も参加しています。企業勤めの社会人も増えています」と、佐藤さんは説明する。事務局長は自身も大学院時代に活動に加わった大学院人間発達環境学研究科の後藤聡美特命助教が務め、学生たちを温かく見守り、導きながら共に汗をかいている。 活動は「ルーム」と呼ばれる五つのグループで進めており、 高齢化が進む都市再生機構(UR)の団地で奮闘する学生グループがある。地域交流創出の会「なごぶい」だ。「なごぶい」は鹿児島の方言で「久しぶり」を意味する。神戸大学六甲台第1キャンパスにほど近い「グリーンヒルズ六甲」でイベントを開き、「久しぶり」と声を掛け合える住民同士の関係づくりに取り組んでいる。 メンバーは国際人間科学部・大学院人間発達環境学研究科「片桐研究室」の有志のゼミ生たち。JST-RISTEXの助成を受けた片桐恵子教授の「ワイがやプロジェクト(多世代交流による孤立・孤独予防)」に触発され、2022年に結成した。神戸大学学生アクションプランの助成をうけながら現在まで活動を継続している。なごぶいに最初期から関わるキム・ナヒョンさんは「自分たちの能力やスキルで、何でもやってみることが重要です」と話す。 初年度は、知らない住民同士の交流を促すクイズゲームを実それぞれがフィールドに出て支援・交流することで、出会いやつながりの場を創出。実体験で得た“気づき”を持ち帰り、ESDの学びの深化に生かす。こうした活動が最終的に広くボランティア人材の育成に結び付くと確信する。白根さんは「学んだことをどう広げていくかは自由。偶然の出会いによってもその広がり方が変わっていきます」と、この可能性の大きさを実感している。 WILLの前身団体の時代から続いている岡山県の国立ハンセン病療養所でのワークキャンプでは清掃活動などを実施。東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大船渡市赤崎町では復興支援として、「復興マーケット」の運営を手伝い、地域起こしに一役買っている。プログラムは数多く、学生の発案を形にする上で卒業生にアドバイスを求めることも多い。さまざまなつながりが活動の支えになっている。(左)国際人間科学部4年 中野 篤史さん(右)人間発達環境学研究科博士課程後期課程3年 キム・ナヒョンさん施。2年目は留学生が多いゼミの特長を活かして異文化に触れられるお茶会を催した。「参加者の多くは60〜70代でした」、現代表の中野篤史さんは解説する。そこで本年度、7月7日に開いた七夕の会(テーマ:レトロ遊びを用いた交流)では事前申込制を廃止。立ち寄りやすくなり、親子連れの姿も目立ったという。 一方、準備と運営では団地住民にも主導してもらい、短冊を飾る笹の調達や当日のカフェの運営を担ってもらった。「続けることが信頼につながります。団地内に仲間が増えました」とキムさんは目を輝かせる。 なごぶいの活動はURも見守っている。高齢化が進む団地は国内に数多くある。URと大学、住民が力を合わせながら活性化策を模索する。「最後は住民自身の仕組みにしなければなりません。なごぶいで他地域にも通用するマニュアルが作れたら素敵です」とキムさんは力を込める。地域高齢者の孤立・孤独の解決を目指す活動通じて学びを深める教育、地域、伝統文化。さまざまに“つながり”活動する神大生をご紹介!

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