史学・日本史学専修11授業では最近の卒業論文から「八世紀における東大寺の荘園経営と地域社会」「八世紀における郡司層の中央出仕をめぐって」「院政期における貴族の人事と家格秩序」「中世前期における多武峰・鎌足木像破裂の政治史的考察」「享保期江戸における出版統制体制の確立」「在郷町池田における町政機構の改革」「明治中期における地方私立中学校論―篠山鳳鳴義塾を事例として―」「初期社会主義における農村社会論―農村問題をめぐる議論の展開過程―」卒業後は教員からのメッセージ卒業生からのメッセージ市澤 哲教授日本中世史。とくに鎌倉・室町期の政治史。現在は中央政局と地域政治史の切り結びに注目して研究を進めています。また、軍記物や記録などの文献の分析にも興味を持っています。古市 晃教授日本古代史。日本古代の国づくりの論理がどのように正統化されてきたのかについて、古墳時代から飛鳥時代を中心に考えています。吉川 圭太講師日本近現代史。日本近現代の社会運動について、法と社会の関係を結節する法律家(弁護士)の活動や思想に着目して研究しています。教員の紹介奥村 弘教授日本近世近代史。日本において近代社会が形成されてくる論理に関心を持ち、地域史、国家史、社会史を研究しています。 日本史学専修の授業には二つの特色があります。第1は学年ごとに到達目標を定めた授業が充実していることです。1年次には大学での研究の基礎をゼミ形式で学ぶ授業を提供しています。2年次には3年生と混成チームで史料を使ったレポート作成に挑み、日本史研究の基礎となる史料の扱い方を学びます。 3年次には4年生の卒業論文作成ゼミに参加し、自分が取り組むべき問題を絞り込んでいきます。これらの授業を通じて、同学年・先輩・後輩とともに学ぶ姿勢が自然に身につきます。第2の特色は、大学での研究と社会の接点について考えるプログラムが充実していることです。地域の古文書を調査したり、博物館や文書館と共同して展示会の企画運営に携わったりするなど、社会との関わりを持ちながら、自分の研究を進めることができます。 学部の卒業生の進路は、就職と大学院進学の大きく二つに分かれます。就職先は一般企業(金融関係、メーカー、マスコミ関係、教育関係など)や公務員など、他の学部と極端な差はありません。中学校・高等学校の教員や博物館学芸員、文書館に勤務するアーキビストなどの専門職を志望する学生の多くは、大学院博士課程前期課程に進学します。前期課程を終えて、一般企業に就職するケースも少なくありませんが、さらに専門性の高い職種を目指す学生は博士課程後期課程に進学します。 歴史上の事件の意味を知るためには、それが起こる舞台とそこで働く力学を史料の読み込みやフィールド・ワークを通じて復元していく、論理的思考と想像力が必要です。また、そうして得た自分の知見を叙述するためには、文学的な技能も求められます。そう言われるとしんどく聞こえるかもしれませんが、逆にいえば、歴史学はこれらの力を養い、私たちに与えてくれる学問だといえます。それだけではありません。歴史に問いかけ、歴史を語る自分とはいったい何者なのかを、自省的に考えることも歴史学の営みです。これらの力や営みは、現代の社会において特に必要とされる力だと思います。一緒に知性をフル稼働させてみませんか。(市澤哲) 日本史学専修では、たくさんの問いかけをしていただきました。「本当にそう言えるのか」「なぜそうなるのか」。当時はなかなか答えを見出せずに頭を抱えていましたが、それらの問いかけは、教員として働くいま、私を支えてくれているように感じます。歴史をはじめとする人文学は、科学技術のようにすぐに私たちの暮らしに役立つわけではありませんが、人間が豊かに生きていく上でとても大切なことを、私たちに教えてくれると思います。それは、一度立ち止まって物事の本質を問うということです。問いかけを大切にする日本史専修での学びを通して、歴史学のおもしろさを体験するとともに、人生の豊かさについて考えてみてください。 (岡﨑慶子 2015年3月卒業 静岡県立浜松工業高校教諭)いま過去との対話を通じて浮かびあがってくる私たちが生きる現在。 日本史学は、現在「日本」と呼ばれている列島およびその周辺地域の歴史を研究することを目的とします。もちろん、より広く国際社会の中での「日本」の位置を歴史的に考えることも、研究の対象になります。歴史の研究といえば、過去の世界にひたすら埋没するように思われがちです。しかし、歴史を研究することは、何よりも私たちが生きる現代社会をより深く理解するということです。なぜならば、私たちが歴史に対して抱く興味や疑問は、今生きている私たちが抱えている問題と直結しているからです。また、過去の出来事を様々なデータ(文献史料、発掘成果、地理的条件、自然的条件等々)を駆使して復元し、その意味を時間軸に位置づけて問うことは、現在おこりつつある事象を理性的に理解することに直接役立ちます。歴史という「根っこ」を持たないものを想像することができますか? 何を知るにも、その第一歩は歴史から始まるといってもいいでしょう。江戸時代のある哲人は「学問は歴史に極まり候ことに候」と言い切りました。現代的な意味においてもこの発言は的を射ています。卒業論文を完成したとき、皆さんが社会を見る目が、大きく変わることを私たちは確信しています。日本史学専修
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