神戸大学 理学部・大学院理学研究科 2023
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低温物性物理学:NMRを用いた超伝導体・磁性体の実験的研究担当教員:藤 秀樹、小手川恒 ものの性質を調べる手法としては、電気伝導、熱伝導、比熱などのように物質全体の平均的な性質をみることのできるマクロ測定法の他に、物質を構成している電子や原子を直接見ることによりその性質を調べる方法があります。これらの手法は、ミクロ測定法と呼ばれています。特に、原子がもつ核スピンの量子力学的な効果を利用し、原子核の周りの電子状態などを調べることが出来る手法は、核磁気共鳴法(Nuclear Magnetic Resonance=NMR)とよばれ、医療現場などではMRIとして活躍しています。物質の電子状態を明らかにするためには、量子効果が現れてくる極低温での測定が必要不可欠です。このため、100mK以下の極低温を発生できる装置や、定常磁場で17万ガウス(17テスラ)の超伝導磁石、4.5GPaの静水超高圧を発生できる装置を利用しています。このように、我々のグループでは、NMRを主な測定手段とし、ミクロな立場から物質の本質を捉えるとともに、マクロな性質を明らかにすることの出来る電気抵抗測定などを相補的に活用し、新しい超伝導体、磁性体、半導体など低温で生じる未解決な量子効果を実験的に解明することを目指しています。極限物性物理学:強磁場を用いた磁性体の実験的研究担当教員:太田 仁、大道英二、大久保晋 物質の性質を調べるときに、非常に低い温度にしたり、高い磁場をかけたり、高い圧力をかけたりすることが有効です。物質をこういった「極限」状態に置くことで、通常、物質が示さないような未知の状態を作り出したり、新しい機能を生み出すことができます。例えば、私たちの研究室には、コンデンサーにためた電荷を瞬間的にコイルに流すことによって、ネオジム磁石の100 倍以上(55 テスラ)強い磁場を作ることができる装置があります。このような強い磁場の中では、物質の磁気的、電気的な性質が大きく変化します。私たちの研究室では、この装置と極低温や卒業・修了後の進路 学部の卒業生は、約75%が外部も含めた大学院に進学します。学部生の就職先は、情報・通信、電機、銀行、証券などの幅広い分野です。 大学院前期課程(修士)修了者は約20%が外部も含めた後期課程(博士)に進学します。就職先は電機メーカーが最も多く、ついで情報・通信、機械、小中高の教員などが続きます。 大学院後期課程(博士)を修了すると、博士研究員として研究を続ける人が多数ですが、企業への就職の道も開けています。17テスラの強磁場、0.36ケルビンの極低温状態でNMRにより超伝導の性質を調べているところ。微小な試料の測定を可能にするナノメンブレンデバイス引上法で単結晶を作製している様子ドハース・ファンアルフェン効果測定大学院博士課程前期課程(修士)修了生の進路(2020〜2022年度)高圧を組み合わせることで、多重極限状態における物質の性質を実験的に調べています。具体的には、電子スピン共鳴という手法やマイクロカンチレバー、ナノメンブレンといった微小計測デバイスを用いて、電気伝導性のある有機物、半導体デバイス材料、量子論的な性質が顕著なスピン系、生体関連物質などを中心に幅広い物質群を対象として研究を行っています。電子物性物理学:新物質開発を目指した実験的研究担当教員:菅原 仁、松岡英一 新しい物質の開発は科学技術に革新をもたらし、同時に基礎科学を発展させてきました。私達の研究室では、新奇な超伝導や磁性を示す物質の開発を行い、その物性研究を行っています。物性の実験的研究を行うためにまず重要なのは、純良な試料(結晶)を得ることです。そこで私達は、引上げ法、フラックス法、化学輸送法等の様々な手法を用いて、超伝導体や磁性体の純良単結晶を育成しています。そして、作製した結晶の物性を、電気抵抗、磁化、比熱等の基礎物性測定や、ドハース・ファンアルフェン効果等の特色ある先端的な測定手段を用いて調べることで研究を行っています。電子スピン共鳴測定に用いる高圧セルフラックス法で作製した単結晶学部卒業生の進路(2020〜2022年度)物性物理学講座本学大学院9民間企業   47その他    2他大学大学院 2教員・公務員 4本学大学院 59民間企業   17その他    11他大学大学院 22教員・公務員 2

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