神戸大学 理学部・大学院理学研究科 2023
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惑星学科・惑星学専攻ホームページhttp://www.planet.sci.kobe-u.ac.jp/2015年度から「惑星学科」に変わりましたが、2014年度までの授業内容とどれくらい変わったのでしょうか。地質学や火山学などの授業は無くなってしまったのでしょうか?日本は四方が海で囲まれているため、海は身近な存在です。神戸大の惑星学科では、海に関わる研究が行われているのでしょうか?宇宙から降ってくる隕石や岩石を調べることで、なぜ太陽系の歴史を知ることができるのでしょうか? 惑星学を学びはじめて5年目。研究者としての第一歩を踏み出したばかりですが、惑星学科で得た様々な知識や考え方が今の私の研究を支えてくれていると日々感じています。 現在私は、地質学に関する研究をしていますが、最初から地質学に興味があったわけではありません。惑星学科に入った決め手も、宇宙に関するあらゆることが学べると思ったからです。高校生の時、ぼんやりと「自然とか宇宙って良いな」「大学では宇宙のことを学んでみたいな」と感じていた一方で、その対象とする分野を1つに絞ることができずにいました。そんな時に知ったのが、この学科でした。惑星学科は地球の中心から太陽系の果てまで、様々な場所で起きる現象について、多方面からあらゆる手法でアプローチをしています。そのことは、実際の授業でも感じることができました。数学・物理などの基礎的な知識の土台を作るところから始まり、実際の惑星(地球)に存在する現象を自分の足で確かめるためにフィールドへ行くこともあれば、銀河系の観察を基にシミュレーションを行うこともありました。学部でのあらゆる分野の授業や実習は、自分では思いもよらなかった興味のあるものをみつけるきっかけになりました。それに加えて、分野外だからあまり関係ないと思っていた他分野の学問はすべて“惑星”というひとつの存在に対する捉え方の違いであって、密接な関係があると気づかされました。実際に、研究を始めた今、それをさらに痛感しています。私の研究の鍵でもある“粘土鉱物”は、水と密接な関わりがある為、火星や小惑星などの水の存在を示す大きな証拠にもなり得るものです。自分では、地層に存在する鉱物の一種としてしか捉えていなかったとしても、他分野からすれば、生命にかかわる大事な鍵となるのです。このように知識を増やし、分野を問わず視野を広く持つことで、自分が学んでいるものの重要性や面白さをさらに実感できるのが惑星学科の強みだと思います。 惑星学科は、自然や宇宙になんとなく興味がある人にも、特定の分野を極めたいと思っている人にもおすすめの学科です。私のように全部の分野を少しずつ見て自分に合うものを見つけることももちろんですが、特定の分野の専門家である先生方や先輩方がたくさんいるため、専門分野を極めたい人にとっても学びを深められる環境です。少しでも興味のある人は、ぜひ惑星学科に入ってみてください。関山 優希(2022年度 学部卒業)現在 博士前期課程1年授業の内容は、「惑星学科」への改組に向けてその数年前から見直し再編をすすめて来ましたので、2015年を境にして大きく変わってはいません。地質学あるいは火山学は惑星学を構成する重要な分野ですから、野外実習や観測実習など実際に地球を体感する授業を充実させ、宇宙や気象などの学問を志向する学生にもその履修を強く求めています。逆に、惑星の形成進化や惑星大気のような分野も学ぶ必要があります。海の底では、約60,000km(地球1周半の⻑さ!)にもわたる巨大山脈があり、地球上の火山活動の約8割が海の中で起こっています。 医学を学び、医師として人々を心の病から救いたい。そんな使命感を胸に受験勉強に励んでいた高校3年生の秋、たまたま目にした皆既月食。空に浮かぶ赤銅色の丸い月はこれまで出会った何よりも魅力的で、それは初めて自然現象・自然科学に興味を抱いた瞬間であり、自分を真に突き動かすのは使命感ではなく興味関心であることに気付いた瞬間でした。そして、その瞬間心を占めた強い興味に従って入学した惑星学科では、「近くの石と地殻の石」「日本は二本だった」と言葉遊びを交えて楽しそうに、地球上の大陸が現在の姿に至った過程について語る先生に出会いました。実習では「新鮮な石」探しに苦労しながらも自分で岩石を採取し、岩石中に含まれる鉱物の様子を偏光顕微鏡で観察しました。顕微鏡の向こうに広がる、時に極彩色、時にモノクロームの鉱物の世界は美しく、今も目に焼き付いています。こうした講義や実習を通じて地球から宇宙までの幅広い学問分野に触れられること、ミクロからマクロまでのさまざまなスケールで、観測・実験・分析・解析等さまざまな手法を用いて自然現象の成因や過程を解き明かすための基礎知識を学べること、また、その中で自分が何に興味を惹かれるのか、何が得意なのかを見つけていけること。これらが惑星学科で私が感じた魅力です。 学部の3年間を通してプログラミングが好き・得意と感じた私は、研究室配属時に観測海洋底科学研究室で計算機を扱える研究テーマを選択しました。この研究室では地球内部の地殻やマントルといった物質の大循環の様子を、海洋底科学・地震学・測地学といった異なる分野の観点から地球物理学的な観測データを用いて解明していきます。ここで私は、船に乗って海に繰り出し、自分たちで観測データを取得することの面白さに目覚めました。また、学会への参加や他研究機関への出張では、さまざまな分野における国内外の研究者に出会いました。そして、こうした経験を通して、大学の外側にまだ見ぬ広大な世界が広がっていること、地球科学・惑星科学のあらゆる分野同士が少なからぬ繋がりを持ち、相互理解によってさらなる発見が得られることを知りました。4年生〜修士2年生の3年間、研究室で研究活動を満喫し、就職した今も海をフィールドにして日夜楽しく海底下構造の観測をしているわけですが、研究室での日々で広がった私の世界や視野は、今も大きく広がり続けています。今この文章を読んでいる皆さんにとっても、この学科が実りある学びや出会いの場になることを祈っています。堀内 美咲2018年度博士前期課程修了(修士(理学)取得)現在 日本海洋事業株式会社 勤務ところが、この活動は深海底で起こっているため、人類はその噴火活動を一度も目にしたことがなく、こうした火山活動が地球システムのなかでどのような役割を果たしているかなど、まだまだわからないことがたくさんあります。惑星学科では、このような未知の領域に取り組んでおり、海上や海底で地球物理的な観測をする研究室や、深海や陸上の堀削を通して最先端の科学を推進しているグループがあります。多くの隕石は、今から約46億年前に太陽系が形成され始めたころにつくられたものです。これらの物質は,太陽系生成期の様々な情報をその中に秘めています。例えば隕石をよく調べると水を含んだ鉱物が見つかることがあります。これは隕石の母天体において、かつて水が関与する変質反応があったことを示しています。このような情報を読み解くためには様々な手法を用いて詳しく分析する必要があります。惑星学科では隕石の分析によって、原始星雲から微惑星がどのように形成し、成⻑・進化していったかを調べる研究室もあります。海上実習(左)、オープンキャンパス(中)、懇親会(右)

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