神戸大学 統合報告書 2025
26/60

「知 」の創出Ⅰ 価値創造ストーリーⅡ 価値創造のための戦略Ⅲ 神戸大学の現在地T OP ICS専門知と総合知の両輪を育てる医学系研究科の新設勝二 郁夫 教授(医学研究科・評議員/副研究科長) (左から)勝二・村上本学では、「大学院医学研究科」と「大学院保健学研究科」を統合し、2026年4月、新たに『大学院医学系研究科』を設置する予定です。現代社会は、新型コロナウィルス等の感染症蔓延や気候変動、さらに生成AI等の技術革新により急速に変化しており、既存の価値観や知識だけでは新たに生じた課題に対応できません。このような社会は「VUCA(「Volatility:変動性」、「Uncertainty:不確実性」、「Complexity:複雑性」、「Ambiguity:曖昧性」)」の時代」と呼ばれ、単独の専門分野の知識では解決が難しくなっています。この大変革の時代における大学は、専門知を深めるだけでは不十分であり、あらゆる分野の知識を総合的に活用し、「総合知」を生み出す場となり、強力に推進することが求められています。新研究科の設置は、総合知を推進するために必要な、アジャイル(agile:敏捷・機敏)な研究・教育体制を構築するために実施し、VUCAの時代の社会要求に応えるものです。また、本学は2024年10月に神戸市と共に推進している神戸未来医療構想の下、医療機器の研究と開発を専門に行う拠点として、村上 卓道 教授(医学研究科・研究科長)青井 貴之 教授(医学研究科・副研究科長)ポートアイランドの医学部附属病院国際がん医療・研究センター(ICCRC)に直結する形で医学研究科メドテックイノベーションセンター(MIC)を整備しました。ここでは、欧米のようにMIC(開発現場)とICCRC(臨床現場)が一体となって医療機器開発を進めています。神戸未来医療構想では、【医療データビジネスプラットフォーム】と【医療機器開発促進・地域産業強化プラットフォーム】の2つの研究開発を実施しています。医療データビジネスPFでは、これまでに培った手術支援ロボット技術および5G/6Gによる通信を用いた遠隔操作技術と、医療データや医療機器データの統合技術(データリンク)を融合し、新たな領域の医療機器開発を行っています。また、医療機器開発促進・地域産業強化PFでは、これまでの研究開発を基にして、ニーズ抽出のための対象領域・医療機関を拡大し、地域企業を中心とした支援およびベンチャー企業の創出・誘致をするなど、世界レベルの医療機器開発クラスター形成を推進しています。秋末 敏宏 教授(保健学研究科・評議員/副研究科長)大学は専門知を深める場であると同時に、社会課題に応える総合知を育む場であることも求められています。新型コロナウイルスの世界的流行を経験し、専門知だけでは乗り越えられない課題を痛感しました。このような背景のもと、本学では2026年度より新たに大学院医学系研究科を設置します。博士課程後期課程では医科学専攻、健康科学専攻、医療創成工学専攻に加え、公衆衛生大学院の機能を担う未来社会医学専攻を新設します。博士課程前期課程においては、これら4つの学問領域を包括する先進生命医科学系専攻を設けます。一専攻化した博士課程前期課程では、総合知の基礎を養う科目を開講します。その中の一つの「学びのデザイン」では、自身の学修目標やキャリアイメージに応じて、指導教員と相談しながら、学生が自らの学びの分野を主25専門分野を超えた「総合知」の推進

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る