Ⅰ 価値創造ストーリーⅡ 価値創造のための戦略Ⅲ 神戸大学の現在地TOP IC S福本 巧 教授(大学院医学研究科・医学系)向井 敏司 教授(未来医工学研究開発センター・工学系)神戸市は近年人口減少が加速し、若者の定着が喫緊の課題となっています。これに対し同市では、企業・アカデミア・病院群の集積を進め、産学官のさらなる連携によって、巨大な医療産業クラスターを構築してきました。その中で神戸市は、神戸医療産業都市を世界最先端の医療機器開発クラスターへと発展させるべく、2019年度から内閣府の地方大学・地域産業創生交付金事業を活用した「神戸未来医療構想」を推進しており、本学もその中核拠点として未来医工学研究開発センターを中心に参画し、医療データビジネスプラットフォームと医療機器開発促進・地域産業強化プラットフォームの研究開発の二本柱と人材育成事業を軸に取り組んでいます。医療データビジネスプラットフォームでは手術支援ロボット技術や5G/6G通信技術、スマート治療室システムを融合し、革新的医療機器の開発を展開しています。具体的には、スマート治療室で培った手術機器データの統合技術から手術支援ナビゲーション等を開発することに加え、将来AIを活用することによる手術の自律自動化を目指し、医療全体のデジタル化を推進しています。医療機器開発促進・地域産業強化プラットフォームではニー村垣 善浩 教授(大学院医学研究科・医学系)保多 隆裕 特命教授(大学院医学研究科・医学系)ズ抽出や地域企業支援、ベンチャー創出を通じ、世界水準の医療機器開発クラスター形成を目指しています。これらの取り組みは、手術支援ロボットと5G通信を活用した世界初の遠隔手術実証実験や、医療機器開発支援案件と上市件数の増加として現れています。人材育成面では、従来取り組んできた医療従事者や企業研究開発者のアップスキリングに加え2023年度に大学院医学研究科に医療創成工学専攻、2025年度に医学部に医療創成工学科を設置し、学生から社会人までの教育を推進しています。さらに医学研究科メドッテクイノベーションセンター(MIC)を設立し、実際の医療機器や研究機器を備えるとともに協力企業を誘致、研究者や学生、医療者らに加えて企業が交流し、実践的に医療機器開発に取り組める仕組みを整えました。企業との連携により、学生は医療機器の社会実装を初期開発段階から体験でき、より実務に直結する教育が実現しています。神戸未来医療構想は2028年度までの10年間の計画であるため、今後さらなる研究開発の深化と実践的に活躍できる人材育成を一層進めていきます。(左から)保多・福本・村垣・向井 人材育成と地域産業強化を担う神戸未来医療構想27「知」の創出
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