Ⅰ 価値創造ストーリーⅡ 価値創造のための戦略Ⅲ 神戸大学の現在地T OP ICSプラットフォーム・ビジネス研究の展開と社会的意義善如 悠介 教授(経営研究科) 本学では、近年急速に変化している社会情勢を踏まえ、地域社会や企業から求められる実践的人材や将来の日本の研究力を支える国際的に卓越した基礎科学の研究者の育成を強力に推進しています。これを実現するための学内制度として、特に若手研究者の育成を目的とした様々な制度を用意し、キャリアアップ形成の支援を行っています。高等学術研究院では、特に国際的に優れた業績を有する若手の教員を准教授または教授に早期に昇任させる「高等学術研究院卓越准教授・教授制度」を設けており、優秀な若手研究者が今後も本学において研究を行うインセンティブとするとともに、部局運営業務を免除することにより研究・教育に専念させ、一層の研究成果創出を促します。本制度ではこれまでに19名が採択され、際立った成果を上げています。今回ご紹介する経営学研究科善如悠介教授(2022年度卓越教授採択)は、経済学から経営学分野のトップジャーナルに多数の成果を発表するなど、プラットフォーム・ビジネス研究のトップランナーとして国際的にも高い評価を受けています。私は、巨大IT企業が採用する「プラットフォーム・ビジネス」に関する研究に取り組んでいます。プラットフォーム・ビジネスは、複数の利用者を仲介し手数料を得る仕組みですが、一部大手企業による自己優遇(自身が提供するプラットフォームで自身の商品などを優先して表示する手法)が社会的に不利益をもたらすのではないかとの懸念がありました。デジタルの拡大により規模が急拡大し、その影響や規制について国内外の政策関係者が議論しています。そこで、経済学・経営学・法学などの異分野の視点も含めて研究を進めた結果、自己優遇が必ずしも社会に不利益を与えるわけではなく、また規制が常に望ましい結果を生むわけでもないことを明らかにし、各国の規制議論に対して理論的基盤を提供しました。今後は、さらなる学際的な研究を進めるとともに、経済産業省のプラットフォームビジネスの規制委員として意見を出すなど政府や企業と連携し、健全なプラットフォーム・ビジネスの成長に貢献していきます。また、新しい分野であることから後進の教育にも注力し、専門人材の育成に力を入れていきます。 また、卓越した研究成果の社会実装を促進させるため、大学発のスタートアップの起業支援にも注力しています。今回ご紹介する理学研究科津田明彦准教授は、「光オンデマンドケミカル株式会社」を設立し、革新的な環境問題の解決を目指しています。さらに、本学では文部科学省の「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択された「バイオものづくりの卓越した基礎研究と社会実装の両輪で世界をリードするイノベーションを継続的に創出する地域中核のグローバル・イノベーション・キャンパス」において、世界的な研究機関と連携しながら世界に伍するバイオものづくり共創研究拠点を形成しつつ、それらの成果からグローバル・スタートアップの輩出を目指した取り組みを進めています。今回ご紹介する先端バイオ工学研究センター蓮沼誠久教授はバイオものづくり共創研究拠点の拠点長として、SDGs実現を目指し、持続可能な資源から製品を製造するバイオものづくり技術の開発を推進しています。29「知」の創出 優れた若手研究者への支援や卓越した研究成果の社会実装の推進
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