神戸大学 統合報告書 2025
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知の創出人材の創出環境の創出財の循環TO PICS光で資源循環を実現する新しい化学技術津田 明彦 准教授(理学研究科) 循環型社会を実現するバイオものづくり研究蓮沼 誠久 教授(バイオものづくり共創研究拠点 拠点長) 神戸大学 統合報告書2025私たちの生活から出る下水や生ゴミ、家畜の糞尿にはメタンが含まれています。メタンは、通常は温室効果ガスとして大気中に放出され地球温暖化の原因となりますが、当研究室ではこのメタンを「資源」に変える研究を進めています。海水の塩素や空気中の酸素と組み合わせ、光を当てることで医薬品やプラスチックの原料を作り出す「光ものづくり」という技術を用いて、従来困難とされたメタン利用を可能にし、CO₂を排出しない化学品生産を実現しました。現在は下水処理場を「化学品工場」として活用する実証研究に取り組み、廃棄物削減と産業振興を同時に目指しています。温室効果ガス削減は世界規模の急務な課題で、その解決は社会にとって大きな貢献となり、そのマーケットの経済効果も10数兆円になります。当グループは、企業と研究者のマッチングや研究成果の事業化を担う神戸大学イノベーション(KUI)による伴走をはじめとする神戸大学の力強いバックアップによって、国や自治体、企業と連携により、「KOBE光ものづくりオープンイノベーション拠点」が誕生しました。本拠点が本学の先端研究の柱の一つとなって光ものづくりを中心に全国へと広がる研究開発と事業化を進めていき、DX・GX・および化学品生産の国内回帰への貢献をはじめとした「阪神・光ものづくり工業地域」の実現を目指しています。地球規模課題が現実の脅威となる中で、「持続可能な経済成長」と「社会課題の解決」の双方に資するバイオエコノミーの推進は、主要国における国家戦略として位置づけられています。その中で、バイオものづくり共創研究拠点は、企業との連携を推進しながら、微生物を活用したものづくり研究を展開しています。従来の物質生産型の連携にとどまらず、バイオものづくりを支える研究プラットフォームそのものの開発を進めています。バイオとAIやロボティクスなどを掛け合わせることで新たな研究システムを構築し、多様な分野でバイオものづくりを活用できる環境づくりに取り組んでいます。これまでにも、再生可能な生物資源を活用した新たな研究領域を開拓し、バイオとデジタルを融合させた取り組みにより、物質生産や研究で成果を上げてきました。開発したプラットフォームを用いて物質生産を行うことで、その効果を解析し、最適な形へと改善を続けていきます。今後は、さらなる異分野との連携・共創研究の拡大を含めて、研究成果の社会展開を進めるとともに、国際的なつながりを生み出し世界のなかでリードする存在を目指して、産学連携を通じた社会実装を推進していきます。30 k n o w l e d g e

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