神戸大学 統合報告書 2025
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座談会学長×博士学生×若手研究者  神戸大学 統合報告書2025分野への応用に取り組み始めています。また、学部学生や高校生など若い人たちに、研究者として夢を与えられたら嬉しいです。    本学は若手研究者支援の制度が整っています。私柳澤は高等学術研究院卓越准教授に採択されているおかげで、研究にとても専念できています。研究者はどんどん挑戦的な研究をしていくべきだと思いますが、時間的に難しい面もあります。そこをサポートしてもらえている分、自身が魅力ある研究者になって、その姿を見て博士課程へ進む人が増えればと思います。   日本の大学では海外と比較して学部から博士課程学長への進学率が低いのが現状です。この現状に対し、もっと積極的に博士人材を育成していかなければならないという強い危機感を持っています。そのためには、まず経済的な支援が不可欠です。現在本学では、250名ほどの博士課程学生を対象に、一人当たり年間240万円以上の経済的支援を実施する等、力を入れています。もう一つ重要なのは、教員の魅力です。教員自身が魅力的でなければ、学生はその道に進みたいとは思わないでしょう。そのためには、一流の教員、つまり卓越した科学者が集まるようなコミュニティが大学内に存在しなくてはなりません。学部学生や修士学生が憧れ、目標とするような教員や先輩研究者がいることこそが、大学の魅力に直結するのです。加えて、本学は多様な研究分野に強みを持つ総合大学です。自らの活動する範囲の外にも様々な研究者が活躍しています。その方々がつながり、交流したり共創したりすることで新たな視点や発見が生まれます。これは研究者はもちろん、博士学生にとっても大きな成長につながるでしょう。また、人を育てることは、教授の最も大切な役割です。私自身二十数年間教授を務めていますが、人を育てることこそが教授の最も重要な仕事だと感じます。厳しさの中にも温かい愛情をもって学生と真□に向き合い、興味や潜在能力を引き出すことが求められます。そうした教員の姿勢に共感した学生が「この人と学びたい」と感じることで、博士課程への関心も自然と広がり、博士人材の裾野も広がっていくと考えています。大学の研究力の源は、博士人材をはじめとする若手研究者たちです。現在、本学の大学院博士課程後期課程には1,600名程度が在籍しています。本学では大学院教育改革推進室を新しく設置し、10年後には博士人材を2倍に増やそうという目標に向けて計画を強力に推進しています。そのために、経済的支援をはじめとした幅広い支援を強化しています。私の好きな言葉に「一日生きることは一歩進むことでありたい」という湯川秀樹の格言があります。大学も、教員でもある研究者も、博士学生たちも、毎日一歩ずつ目標に向かってともに成長していきましょう。最後に、皆さんの議論を踏まえて、学長から今後の神戸大学の方向性を聞かせてください。未来の研究者を育てるために08

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