力決定木750 入瀬戸内海における海水中二酸化炭素の実測と機械学習による推定モデルの構築春季夏季+:放出−:吸収非海峡部 海峡部内海域環境教育研究センター 准教授 林 美鶴図1 瀬戸内海及び太平洋で測定した海洋・大気中二酸化炭素分圧と交換量で、海水中の変動が大きく、瀬戸内海内部で季節変動があり、夏季はpCO2を放出しており、その傾向は海峡部で顕著です 近年、海洋酸性化やブルーカーボンに関係して、沿岸海域での二酸化炭素研究が増加しています。海事科学研究科の前身である神戸商船大学では、岡山理科大学との共同研究により、1990年代から海水中二酸化炭素分圧(pCO2)の計測に着手しました。現在は市販のpCO2計がありますが、かつてpCO2計測は容易ではありませんでした。神戸商船大学/神戸大学の「深江丸」で瀬戸内海全域を、また岡山県牛窓町にある岡山大学の実習場で実測した、15年間に渡る沿岸海域でのデータセットは世界的にも稀少です(海の研究:https://doi.org/10.5928/kaiyou.33.5-6_77)。図1はその15年平均値が、大阪湾だけは両季節とも吸収していることが明らかになりました。大気中海水中 我々はこのデータセットを使って、水温、塩分、pH、溶存酸素濃度からpCO2を推定する機械学習モデルを構築しました(図2)。牛窓、大阪湾、備讃瀬戸、その他の瀬戸内海の各モデルの推定誤差は、それぞれ2.7%、12.1%、7.6%、5.7%です。牛窓では定点観測を行ったため、とても高い推定誤差が得られました。 推定に用いる水温などは、いずれもpCO2と関わり、且つセンサーで容易に測定できるため、過去にも多く測定されています。瀬戸内海では国や地方自治体による1970年代からのデータが存在するため、知り得なかった過去半世紀に渡るpCO2と、海洋-大気間二酸化炭素交換量を推定することが可能です。瀬戸内海は高度経済成長を経て、富栄養化や赤潮の発生、干潟や藻場の減少があり、その後の環境保全対策により現在は貧栄養化して漁獲量が減少しています。このような海洋環境の劇的な変化が、海洋の二酸化炭素動態に与えた影響や、この間、瀬戸内海がCO2の吸収・放出のどちらの役割を果たしたのかを知ることができます。 市販のpCO2は1千万円弱するため、観測データを増やすことは容易ではありません。海事科学研究科「海神丸」には、pCO2と海洋-大気間交換量推定に必要な、水温、塩分、pH、溶存酸素、大気中CO2、風速の各測定器が搭載されており、全航海で自動測定を行っています。瀬戸内海の二酸化炭素を含めた海洋環境動態のモニタリングの継続は、沿岸海域のブルーカーボン機能の向上に寄与することが期待されます。pCO2, 水温, 塩分, pH, 溶存酸素 水温, 塩分, pH, 溶存酸素 pCO2ランダムフォレスト 決定木:750決定木1pCO2検証データ:30%pCO2比較(精度評価)測定データ学習データ:70% 入力決定木2 決定木3pCO2pCO2pCO2 推定値平均図2 機械学習モデル構築の概念環境に関する教育研究とトピックス
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