神戸大学 環境報告書 2025
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学長メッセージ/センター長メッセージ/環境憲章持続可能な社会の実現に向けた戦略大学概要/環境保全のための組織体制神戸大学の環境パフォーマンス環境保全推進センターの活動第三者意見環境に関する教育研究とトピックス環境に関する教育研究とトピックス環 境 保 全 に 資 す る サ ス テ ナ ブ ル 経 営 の 在 り 方 の 探 求 経営学研究科 教授 上林 憲雄https://b.kobe-u.ac.jp/hcmrec/※1水害等の災害リスク・対策等を含む※2GHG排出量削減等の対策を含む図1.日本企業と欧米企業の自然資源に関する言及割合の差(2023年)図2.日本企業と欧米企業の人権に関する言及割合の差(2023年)出所:株式会社国際協力銀行(2023)『わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報』より一部変更して掲載(図1、2共通)https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2023/image/000005619.pdf 持続可能性やサステナビリティが現代社会のトレンドを示す重要なキーワードとなっています。企業経営や経営学においても、持続可能な経営のあり方に関する研究が進められており、そうした経営のことは「サステナブル経営」と呼ばれます。“サステナブル”は、長く持続可能なという意味です。 国連が2030年までに協働して取り組むべき目標として設定したSDGs(持続可能な発展目標)は17個の種々雑多な目標群から構成されていますが、これらはざっくり「地球」と「人間」の2種に分類できます。地球の環境保全に資するための目標として、例えば12「つくる責任、つかう責任」、13「気候変動に具体的な対策を」などが、人間の基本的人権を守り誰もが住みやすい社会にしていくための目標として2「飢餓をゼロに」、3「すべての人に健康と福祉を」などが設定されています。 これらSDGsの理念を実現していこうとする経営の仕組みがサステナブル経営なのです。地球の自然環境のみならず、人間や社会の環境も持続可能なものへ向けた改善がなされていることが重要なポイントであるといっていいでしょう。 ただし、統合報告書を作成している日本企業の大半はCO2排出量を取り上げており、それ以外の貧困や飢餓、生物多様性、ジェンダーや人権問題等については、欧米企業と比べるとほとんど記述がありません(図1、図2を参照)。多くの日本企業は、そもそもSDGsへの真の理解が不足しているとともに、21世紀に入り急速に進んだグローバル市場主義の進展に伴い、短期収益至上主義や株主資本主義の影響がいまだに強く作用しているためと思われます。 こうした現状を改善するために、目下、日本企業ではそのミッションやビジネスモデルの修正を迫られています。企業のKPI(重要業績評価指標)としても、経済的指標のみならず感情や知識といった人間的側面を評価する指標の策定が検討されているのです。これらの新たな価値指標は、時間はかかるものの最終的には企業収益に貢献しうることが、我々の研究においても明らかにされています。元書籍:戸谷圭子「サステナブル経営における価値創造」、西尾チヅル・上林憲雄編著『サステナブル経営』同文舘出版、2025年、所収。教員ホームページ:https://b.kobe-u.ac.jp/faculty/kambayashi/環境に関する研究/その他

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