ユニバーサルサイエンスチャレンジ:障害がある・なしに関わらず子どもたちと須磨の海の魚の種類をDNAで探る人間発達環境学研究科 助教 佐賀 達矢採水の様子。ビーチマットを敷くことで車椅子でも砂浜を移動できた。シリンジを使っての海水から環境DNAをろかした。環境DNA分析で検出した魚に触れてみる。 37名の参加者を迎え、まず須磨海岸に隣接する須磨ホールにて講義を行 須磨海岸にて、障がいのある方へのビーチアクティビティ支援を行っているNPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト(以下、須磨UBP)と共同で、2日間にわたり「環境DNA実験教室」を開催しました。【実習1日目】いました。講義内容は、生態系と生物多様性の概説、および環境DNAの基礎知識の紹介です。その後、須磨海岸にて採水実習を実施しました。車椅子の参加者の方も波打ち際まで移動できるよう、砂浜にビーチマットを敷設し、車椅子のまま採水ポイントへご案内しました。車椅子以外の参加者はボトルを用い、車椅子の参加者は杓(しゃく)を用いて、ボトルとバケツの共洗いを行ったうえで海水を採取していただきました。 採取した海水入りボトルは須磨ホールに持ち帰り、50mLシリンジとカートリッジフィルターを用いて1L(50mL×20回)をろ過しました。採取した環境DNA 試料は神戸大学大学院人間発達環境学研究科・源研究室にて魚類のDNAメタバーコーディング解析を実施しました。ブリやマダイ、マアジといった一般的な食用魚からハオコゼやイソギンポなどの非食用魚まで、計48種の魚類を検出しました。この結果は、同様の手法で大学所属研究者が同地点で実施した調査結果と遜色なく、手順に従うことで誰でも身近な魚類相を環境DNAから調査できることを示しています。【実習2日目】 34名を対象に、神戸大学鶴甲第二キャンパスにて環境DNA分析結果の紹介と生物多様性に関する実習を行いました。まず、前回の環境DNA分析手順を振り返り、生物多様性の基本概念を復習した後、解析結果を参加者へ発表しました。続いて、ブリ、マダイ、キチヌ、クロダイ、ヘダイ、メジナ、カワハギ、マアジ、マルアジの9種の魚を実際に観察し、触り、スケッチを行いました。最後に、マダイの煮付け、サバとカマスの塩焼きの試食を実施し、参加者同士で感想を共有しました。その後、佐賀が生態系サービスと生物多様性の関係について解説を行い、全日程を終了しました。今回の実験教室を通じて、障がいの種類やその有無など多様なバックグラウンドを持つ方々が環境DNAを用いた生物多様性調査に親しみをもつ機会となりました。また、科学技術によって身近な生物多様性を検出し、それを五感で実感することで自然や生き物から得られる恩恵を理解することができました。環境に関する教育研究とトピックス環境に関する教育/研究/保全活動
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