神戸大学 環境報告書 2025
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学長メッセージ/センター長メッセージ/環境憲章持続可能な社会の実現に向けた戦略大学概要/環境保全のための組織体制環境に関する教育研究とトピックス神戸大学の環境パフォーマンス環境保全推進センターの活動第三者意見第三者意見※1 環境省、化学物質、廃棄物及び汚染に関する政府間科学・政策パネル(ISP-CWP)の設立について https://www.env.go.jp/press/press_00022.html氏  名  三宅 祐一現  職  横浜国立大学 大学院環境情報研究院 教授経  歴   2005年 産業技術総合研究所 産総研特別研究員 2007年 横浜国立大学 安心・安全の科学研究教育センター 特任教員(研究教員) 2010年 静岡県立大学 環境科学研究所 助教 2021年 横浜国立大学 大学院環境情報研究院 准教授受 賞 歴   2017年6月  日本水環境学会 論文奨励賞(廣瀬賞) 2018年9月  環境科学会 奨励賞 2021年9月  環境科学会 論文賞 2024年9月  環境科学会 論文賞研究分野  化学物質管理、環境化学、環境分析化学、環境動態解析、リスク評価所属学会   International Society of Indoor Air Quality and Climate 日本環境化学会、室内環境学会、日本水環境学会、環境科学会、大気環境学会ジョンが議論されている状況ではありません。しかしながら、近い未来において大学および関連科学者に対して、関連の 直近の出来事ではありますが、2025年6月19日、20日にウルグアイ東方共和国のプンタデルエステにおいて開催された政府間会合において、新たなパネル「化学物質、廃棄物及び汚染に関する政府間科学・政策パネル(ISP-CWP: Intergovernmental Science-policy Panel on Chemicals, Waste and Pollution)」が設立されました。ISP-CWPは、気候変動分野でのIPCC(気候変動に関する政府間パネル)や生物多様性分野でのIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)に続く、化学物質・廃棄物・汚染分野の新たな政府間科学・政策パネルとなりました。このISP-CWPは、化学物質・廃棄物の適正管理および汚染防止に関する科学的知見を政策に反映させることを目的としており、当該分野に関する最新の科学的・技術的アセスメントの作成・発信などを通して、政策立案に関連する科学的基礎を提供するための国際的な組織です。主な機能としては、①課題の特定と対応策の提示(ホライズンスキャニング)、②現在の課題に関する評価、③科学的研究のギャップ特定と科学者・政策決定者間の連携、④科学的情報を求める途上国との情報共有、⑤キャパシティ・ビルディングが想定されています(※1 環境省)。設立されたばかりのISP-CWPが今後どのように関連課題に取り組み、国内外の大学・科学者がどのようにパネルに積極的に関与するのかは、明確なビ知見の提供や大学・学術界の連携が求められることになると考えています。神戸大学においては、持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラルなどに関する取り組みが、大学組織内や周辺地域の関係者と広く実施されていると理解できました。特に、学生による「SDGs未来ビジネス学生コンテスト2024」において、社会の課題を解決する様々なアイデアが生み出されているようで、アイデアの一部でも構いませんが産業界を巻き込みながら実用レベルに昇華していくことを期待しております。学生時代におけるある種の成功体験が、次の世代の新たな可能性の創出に繋がるはずですので、大学・産業界による積極的なサポートが肝要かと考えます。一方で、環境報告書が省エネルギーや省資源化への取り組みを示すだけに「形骸化」していないか、今一度考える時期になっているのではないかと考えています。ISP-CWPに関して述べたような、大学および科学者に求められる関連知見の提供や大学・学術界の連携に視点を移すと、「神戸大学 環境報告書2025」に記載された事項には、ISP-CWPに資する相当量の情報が埋もれているように思います。大学に求められる役割や連携の在り方が定まっていない状況ですが、来年以降、従来の枠にとらわれない環境報告書が出てくることを期待したいと思います。 さて、個別の事項に関しては、化学物質管理を専門としているので、「大学における化学物質管理」が気になりました。近年、労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントが義務付けられ、設備・機器の爆発や引火などに関する「化学物質の危険性に基づくリスク」と、労働者の健康への悪影響に関する「化学物質の有害性に基づくリスク」の両方がリスクアセスメントの対象になりました。大学全体で適正なリスク管理をしていくことは喫緊の課題かと思いますが、リスクアセスメント手法の詳細が指定されていないことで、十分なリスク管理ができていないことが想定されます。例えば、化学物質の有害性に基づくリスクを評価するために、曝露評価を簡易な数理モデルのみで行うと実際の作業状況を過小評価することが考えられます。個人曝露量測定なども併用したリスクアセスメントの実施が曝露評価の精緻化に有用かと考えますが、技術的問題・コスト的負荷があり、浸透しているとは言いがたい状況です。少なくとも技術的な問題点の共有は、他大学とも共有化ができるはずですので、実務レベルでも大学間の連携が進むことを期待しております。

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