神戸大学 学生広報誌『door』Vol.03
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おかべほくと□2001年、大阪府枚方市生まれ。大阪・私立高槻高校を卒業後、2020年、神戸大学農学部に入学した。2024年、大学院農学研究科博士課程前期課程に進んだ。趣味はカメラ、バドミントン、バイクでのツーリングと多彩。ダムを見に行くこともある。何よりも、人とコミュニケーションを深めるのを楽しみにする。□木市在住。ち279人が倍率3・6倍の狭き門を突         破している。 「志」選抜2期生(2020年入学)の岡部さんの専門は、一般には聞き慣れない地下ダム。地中に水を通さない壁を作って地下水の流れをせき止め、水をためるダムのことで、水源の少ない小さな島や砂漠など乾燥地帯に設置されている。アフリカ大陸、米国、ブラジルの乾燥地帯などに点在し、国内では、南西諸島などに造られている。岡部さんは、もともと食に興味があり、少年時代に読んだグルメバトル漫画のワンシーンが、学部選択に大きく影響している。漫画の一話に食糧危機に陥り、すべての食事をサプリで補っている描写があったといい、漫画家が抱く危うさに共感した岡部さんは、将来の食糧危機を懸念し、食を守るための研究がしたいと農学部を志望することになった。学部では、農業の基盤を支える農業工学分野を学び、環境をどう整備すればいいのかを研究してきた。中でも水の大切さを重要視し、全国的にも珍しい地下ダムを研究する井上一哉教授を知って研究室の門をたたいた。卒業論文は、「移流分散現象に及ぼす物理的化学的不均質性の影響」をテーマに選び、地下水中に混入した化学物資の流れを分析し、目に見えない地下水の流れを予測してきた。博士課程前期課程の1年間では、卒業論文で書いた地下水の流れの予測を実際に確認するため、地下ダムのある宮古島や喜界島を調査。掘った井戸にセンサーを入れて水質測定を実施し、研究室に帰ってからデータ解析作業に当たっている。また、2025年の年明けは1カ月半、米国に滞在し、ネブラスカ大学リンカーン校で研究を深めた。ネブラスカ州は大規模な地下水源を利用した農業が盛んな地域で、AI(人工知能)を用いる手法で地下水量の把握や予測をする技術を現地の研究者から学んだという。何にでも興味を持つ岡部さんだが、やりたいことが多い分、悩み迷うことの多い性格だと自己分析する。高校1年生の時には、医学部か薬学部か文系の心理学か、迷った時期があった。また、大学3年生で研究室を選択する際にも、「どの研究も、農業や環境を守るための役割を担っている」と迷いに迷った。最終的には初心に戻り、高校2年生の時に本学のオープンキャンパスで興味を持った地下ダムの研究を選択するに至った。迷った時に、岡部さんは何を大切にしているのか。 「やって失敗した方が、やらなくて失敗したよりも後悔が小さい。迷ったり悩んだりしたら、なるべくやろうと決めています。『志』特別選抜を受ける際にも、やらずに失敗して後悔したくないと受験することにしました」スイスでの学会に参加したことで新しい研究のテーマにも興味が広がり、これまで進めてきた研究とどう関係付けていくのか、新たな迷いも生じてきた。多くの後輩学生に対し、「やるかやらないか迷ったら、何でもやってほしい。失敗しても、挑戦し直すことができます。神戸大学には、挑戦するフィールドがたくさんあります。好奇心を持って臨めば、楽しい生活になります」と熱いメッセージを送る。本学の「志」特別選抜制度は、2018年に設けられ、2019年春に1期生が入学した。新しい知を創造し人類社会の発展に貢献しようとする学生の発掘を目指している。文学、国際人間科学、法学、医学、工学、農学、海洋政策科学、システム情報学の8学部で選抜を実施し、2025年入学までに総志願者は1005人、う 「志」特別選抜組、 「地下ダム」研究に没頭岡部北斗さん (農学研究科博士課程前期課程2年)神戸大学には、志を高く持って主体的に学修し、グローバル社会の課題に挑戦する人材を集める「志」特別選抜制度がある。その選抜生の一人、大学院農学研究科の岡部北斗さん(23)は、現在、博士課程前期課程(2年)に進んでいる。農業用水を確保するための「地下ダム」の研究を深め、現地での実験や国内外での学会参加に余念がない。SENSATIONAL STUDENTSこの神大生がすごい03

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