神戸大学大学院 国際文化学研究科 2024-2025
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研究科への招待国際交流CoursesnvitationQ&AI現在、国立民族学博物館准教授人類学的研究―中央砂漠における飲酒をめぐる諸実践に注目して」Graduate School of Intercultural Studies|11 所属学生からのメッセージ眞明 夏三さん (博士前期課程2年) 立命館大学国際関係学部卒業研究テーマ:「ガーナの葬式」修了学生からのメッセージ平野 智佳子さん(2019年度博士後期課程修了)研究テーマ:「ポスト植民地状況を生きるオーストラリア先住民のアボリジナル・ウェイに関する学部では文化人類学を専攻していませんが、大丈夫でしょうか。必ずしも学部で文化人類学の専門コースにいる必要はありません。ただし、文化人類学についての基本的知識を身につけておくとよいでしょう。最近は手頃な入門書、概説書がふえていますので、まずはそれらを参考にし、所属する大学の文化人類学関係の講義・演習を受講することをお勧めします。大切なことは、明確なテーマをもち、これを文化人類学の視点から考える姿勢です。また、先生方、学生ともにさまざまな専門性を持つ人が集まっていることも特徴です。在籍する学生数は多いですが、誰一人として全く同じ研究をしている人はいません。授業や合同ゼミのコメント、さらに研究室での何気ない会話など、誰と話しても自分とは異なる視点を持っており、いろいろなところに研究のヒントが転がっています。文化人類学コースにいる人と話していると、自分たちとは異なる文化、慣習、宗教など、「違う」ことを拒否するのではなく、面白い、なんでだろう、と深堀りしていく考え方を持っている人が集まっていると感じます。また、研究では他の文化を見るだけでなく「自分たち」って何なんだろう、とも問いかけます。研究を進めていくと知らないこと、わからないことばかりで途方もない気分になることもありますが、先生方や他の学生ともに「違い」や「わからないこと」を面白いと思いながら研究を進めていくことができます。大学院では、このフィールドワークでの発見を民族誌としてまとめていきます。先行研究の読解や整理、調査データの扱いや議論の展開の方法等、論文執筆の技術の習得は決して容易ではありませんが、先生方は根気強く指導してくださいますし、院生仲間との交流も心の支えになるでしょう。論文執筆に並んで、研究生活では調査資金の獲得も大きな課題となりますが、日本学術振興会の特別研究員など競争的資金に関してコース内にしっかりとしたサポート体制が築かれており、採択実績も継続して出ています。文化人類学コースでは数年間に渡る課程を修了した後、多くの院生がアカデミズムの世界に羽ばたきます。研究者として第一線で活躍される先輩方の背中を見て私も研究職を志しました。まだまだ駆け出しですが、院の扉を叩いた日の知的好奇心は衰えることなく、益々刺激的な毎日を過ごしています。フィールドで得られた知見から私たちの生きる世界を紐解くことに関心のある方はぜひ本コースの扉を叩いてみてください。皆さんと人類学の議論を交わす日を楽しみにしています!私はガーナの葬式をテーマとして研究をしています。死という、人類に普遍的な事象ですがその在り方は実に様々です。ガーナの人々がどのような死生観に基づいて、どのような葬式をしているのか、文献調査やフィールドワーク(現地調査)をもとに研究していきたいと思っています。私は学部時代に国際関係学を専攻し、新卒で就職、1年半働いた後に退職しました。その後、青年海外協力隊に携わる中で、自分の価値観が必ずしも現地の人々に当てはまるわけではないと感じ、自分ではない人々の視点を知りたいと考え、文化人類学を志しました。 文献を読み、先生方と話す中でガーナの葬式という研究テーマにたどり着きました。大学院、そして文化人類学コースに入るということは、自分の面白いと思うことを突き詰められる環境に身を置くことだと感じています。授業だけでなく、読書会、個別指導などを通して、文献を読み、議論を深めます。特に合同ゼミという、コースに在籍する学生と先生方の全員が出席するゼミでは、毎週数名の学生が研究報告を行い、その発表に対して出席者からコメントがもらえます。合同ゼミは以後の研究の方向性を検討できる貴重な機会であるとともに、定期的に発表順が来るので、研究の進捗の1つの目安にもなります。オーストラリア中央砂漠、どこまでも続く荒野に現れるアボリジニの小さなコミュニティが私の調査地です。そこでアボリジニたちと共に暮らしながら、規制下における酒の獲得、分配の方法を調査しています。人類学的研究に不可欠ともいえるフィールドワークでは、自らの「常識」が覆される瞬間が度々訪れます。私にとってアボリジニたちとの生活は驚きと困惑の連続でした。彼らと行動をともにしていると、従来のものの見方ではどうしても説明のつかないことがあると気づかされます。そうした違和感は、時として「分かり合うのは無理なのではないか」という苛立ちや徒労感に結びつくこともありますが、簡単に手放してはいけません。なぜなら、それらが現地の人々の生きる世界を読み解くための重要な手がかりとなるからです。指導教員以外に研究上あるいは論文の指導を受けたり、論文テーマが変わって指導教員の変更をすることはできますか?教員全員の共同指導体制をとっており、指導教員以外からも指導を受けることができます。また、研究テーマを変更する必要が生じた場合には、所定の手続きを経て指導教員をコース内で変更することも可能です。木村 彩音さん (博士後期課程3年)研究テーマ:「オーストラリア先住民トレス海峡諸島民の混血と混淆性をめぐる人類学的研究」私の先住民との出会いは、子どもの頃読んだ絵本でした。民族衣装を着て、動物や精霊と話し、自然と調和して生きる姿がとても印象的でしたが、将来自分が彼らの研究をすることになるとは思ってもみませんでした。私が研究対象としているオーストラリア先住民のトレス海峡諸島民は、風や波を読み、ジュゴンやウミガメを獲って暮らす海の民です。それだけ言うと、絵本と同じく自然と調和して生きる人びとのようですが、それは彼らの全てではありません。フィールドワークを通じて、彼らの人間臭さや近代に生きるたくましさに触れると、自分の中の先住民像が偏ったものであったことに気付かされます。このように、自分の中の思い込みや常識が相対化されることこそ、現地の人びとと深く付き合うこと、そしてそこから彼らの見ている世界を理解しようとする文化人類学の醍醐味だと思います。澤野 美智子さん(2013年度博士後期課程修了)神戸大学文学部人文学科卒、韓国ソウル大学校社会科学大学院人類学科修士課程修了博士論文題目:「〈オモニ〉を通して見る韓国の家族―乳がん患者の事例から」現在、立命館大学総合心理学部准教授文化人類学コースでは、国内外様々な場所をフィールドとする院生が集まり、人類学的思考の訓練を積んでいきます。人類学を基本的な土台としつつも、それぞれ多様な分野、現象に関心を持っていて、互いに議論を交わし新たな知見に触れるのはとても刺激的です。また院生は、そうして得た知見やフィールドワークの成果を、学会発表や論文投稿などを通じて積極的に発信することが求められます。本コースでは、それに必要な論文執筆や発表の技術、議論の深め方などを身につけるサポート体制が整っています。週に一度開かれるコース内のゼミでは、実際の論文の草稿を検討しながら院生同士で議論を交わすほか、コースの先生方全員から指導を受けることができます。先生方には様々な分野とフィールドのエキスパートが揃っており、多様な角度から根気強くコメント、指導をしてくださいます。こうしたプロセスを経て、博士後期課程の院生は博士論文の完成に必要な技術と思考力を身につけます。研究を続けていくことは決して容易なことではありませんが、充実した研究環境はその継続を大いに後押ししてくれるものだと思います。私自身も、本コースの恵まれた環境と周囲の人たちに支えられていることを日々実感しています。博士課程では、研究者としての心構えから論理的な文章の書き方、博士論文のアドバイスにとどまらず、将来就職したとき学生を教えるためのスキルに至るまで、長期的な展望を見据えたご指導をいただきました。指導教員以外の先生方に教えを請いに行くことも積極的に奨励される雰囲気ですので、ひとつの問題に対して様々な角度からご意見をいただくことができ、考えを深めることができました。また、院生たちで行う研究会や読書会も、研究情報を交換したり学問的知見を深めたりするにとどまらず、研究上の悩みを共有したり互いにアドバイスをしあったりするうえでも非常に有意義でした。志願者の皆さんも、このような恵まれた環境を活かし、充実した大学院生活を送ってください。私の研究テーマは、韓国の家族です。特に、乳がん患者さんたちが病気に対処するなかで家族とどのような相互行為を行っているのか、ということに注目して博士論文を書きました。現在はさらに、代替療法的な食餌療法、ケア、ジェンダーなどの問題へと広げて研究を進めています。Cultural Anthropology

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