神戸大学法学部長1902年に設立された神戸高等商業学校をルーツとする神戸大学法学部は、わが国の社会科学をリードする教育研究機関の一つとして、法学・政治学の学問的発展に貢献しつつ、多様な分野で活躍する卒業生を輩出してきました。このような伝統の上に立ち、私たちは、社会の要請に対応できる問題解決能力、国際的貢献を行う能力を有する人材の育成を目標にして教育を行っています。高校生の皆さんには、法学・政治学を学ぶということの具体的なイメージがわきにくいかもしれませんが、社会で生じるさまざまな課題を分析して解決方法を探るために、法学・政治学の知識・考え方を習得することはとても有意義です。国家の基本体制をどのように規律するか(公法学)、社会で生じる多様で複雑な紛争をどのように解決するか(民刑事法学・訴訟法学。さらに労働法・知的財産法・環境法などの発展的法分野)、人々の利害をどのように調整して意思決定を行い、さらにその決定をどのように実行していくか(政治学・行政学)、国同士の国際的な紛争にどのように向き合うか(国際関係論・国際法学)、法現象の現実はどのように展開しているのか(基礎法学)、などを学ぶことで、社会的課題を多面的に捉え、その解決に近づくことが可能になります。COVID-19のまん延が世界の人々と社会に突きつけた多くの問題はもちろんのこと、AIの急激な発展への応答、気候変動問題・エネルギー問題や国際的な緊張・紛争への政治的・社会的対応など、私たちがただちに取り組むべき課題は数多く、法学・政治学の素養を駆使しつつそうした状況と課題に対応できる、新たな発想を生み出す能力を備えた卒業生を送り出すことが、神戸大学法学部の使命です。神戸大学の特徴の一つは、学生数との比率で見たときに教員が大変に多いことです。それはとりもなおさず、学生と教員の距離が近く、きめ細かい教育をできているということです。それに加えて神戸大学法学部の教員はいずれもそれぞれの専門分野で日本を代表する研究者であり、世界水準でも研究を進めています。私たちが提供する教育は、必ずや、学生の皆さんの関心と知的好奇心を刺激するはずです。さらに私たちは法学・政治学の学修にとどまらず、より広い社会科学諸分野も在学中に効果的に学べる仕組みを展開しており、その一つである「法経連携専門教育プログラム」は、法学と経済学の複眼的視点により社会問題に立ち向かう学生を育成する、世界的にも先駆的な教育プログラムです。私たちはまた、より高度な問題解決能力・研究能力を習得するために学生の皆さんが大学院に進学することも応援しています。「法科大学院進学プログラム(法曹コース)」は、法学部3年間+法科大学院2年間の一貫した法学教育を通じて比較的短期間で司法試験に合格し、弁護士・裁判官・検察官になることを目指すプログラムで、既にこのプログラムを通じて3年次卒業を経て法科大学院に進学した学生も現われています。「大学院法学政治学専攻進学グローバル・プログラム(速成プログラム)」では、大学院に進学して将来グローバルな活躍を目指す学生に対して、早期卒業を促進するなどの支援を行っています。神戸大学法学部がある六甲台キャンパスは、壮麗な雰囲気をいまに伝える昭和初期建築の由緒ある建物を有するとともに、神戸港や大阪湾を一望できる絶好のロケーションにあります。その美しく落ち着いたキャンパスで私たちは、人と人のつながりを大事にする学びの場を作っていきます。多くの意欲的な学生の皆さんにこの地でお会いできるのを、楽しみにしています。くるす・かおる 東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得退学。博士号(大阪大学)。九州大学助手、神戸大学国際文化学部助教授、大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授を経て、神戸大学大学院法学研究科教授。研究テーマは、国際関係論、グローバル・ガヴァナンス論、人間の安全保障論。11栗栖 薫子 教授学部長からのメッセージ
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