神戸大学 法学部案内 2025
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 神戸大学法学部で教鞭をとる教員は、国内外で活躍する、各分野を代表する研究者です。学会の理事長や理事を務めていたり、受賞歴のある教員も多く、また、学部全体の科学研究費(国からの競争的研究資金)の獲得率は、全国トップレベルを誇ります。同時に、多くの教員は、公務員試験などの各種国家試験の試験委員、国や地方公共団体の審議会委員などの公職を務めて、社会貢献を行っています。 神戸大学法学部では、教員1名あたり入学定員約3名という全国トップレベルの「教員と学生の距離の近さ」のなかで、最先端の研究に基づく高度な授業を受けることができます。 私は民法を研究しています。民法は、所有権、契約、婚姻・親子、相続といった、社会の基本となるルールを定める法律です。この民法を対象とするのが、民法学と呼ばれる学問分野です。そして、民法が定める内容自体が広範であることも影響して、民法学は、その目的と方法のいずれについても、多様性を内に抱えるものとなっています。そうした中、私自身は、主として、民法に関係する複数のルールの相互関係を明らかにすることを目的として、フランスの民法学を参照するという方法により、研究を進めてきました。 民法は社会の基本ルールを定めるものであるため、これに関係する個別ルールの数は膨大であり、また、社会の変化に応じて個々のルールの内容が変化することもあります。このため、複数のルールの間での整合性をどのようにして確保すべきかが問題となることが少なくありません。そして、日本の民法がフランスの民法から影響を受けて制定されたものであることもあって、日本の民法に関係する複数のルールどうしの関係性を考えるうえで、フランスの民法学は少なからぬ示唆を与えてくれます。 数が多く内容も流動的な民法に関係する様々なルールの間の関係性を、外国における動向にも目を向けながら研究することは、大変難しいことです。しかし、そのことを通じてこの社会に対する理解を深められることは、民法研究の大きな魅力のひとつであると感じています。 私は憲法を研究しています。憲法とは、国家における統治権の根拠、組織、そして限界を規定する法規範です。日本では1946年に制定された日本国憲法が憲法に該当します。日本国憲法は日本国における最高法規として位置付けられ、国会を含むすべての国家権力は憲法に従わねばならず、憲法と矛盾する法律は無効になるのが原則です。 もっとも、日本国憲法の条文の文言は抽象的で、条文の数も103条しかありません。そのため憲法の条文を見ただけでは、いかなる国家行為が合憲となり、違憲となるかは直ちには判別がつきません。多くの憲法問題は憲法の解釈に委ねられています。日本国憲法によって憲法を解釈する最終的な権限を与えられているのが最高裁判所です。そして、実際に最高裁判所が憲法解釈を示したのが憲法判例になります。立法や行政は、憲法判例を前提に運営されています。現在の日本の憲法の運用は、憲法の条文と憲法判例が合わさって形成されていると言えるでしょう。最高裁判所が設立されてから75年以上経ち、膨大な数の憲法判例が蓄積されています。私は、この憲法判例の意味、相互関係を明らかにすることを研究テーマの一つとしています。 憲法解釈は常に政治的判断と表裏一体のところがあります。そのため、憲法解釈には通常の法解釈とは異なる特殊性が常につきまといます。司法による違憲審査は各国において実験と失敗を繰り返してきました。私は、近年、アジア諸国も含め、多くの国の研究者と議論し、それぞれの国の実践を学びながら、日本における政治と司法のあるべき方向性を探る研究をしています。33瀬戸口祐基 准教授(民法)木下昌彦 教授(憲法)神戸大学法学部の特長① 研究を語る研究を語る優れた研究力

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