数学科と数学専攻では、解析・構造・応用の3つの講座によって、現代数学の諸分野を幅広くカバーし、研究しています。純粋数学では代数学・幾何学・解析学、応用数学では確率論・計算数理・組み合わせ数理などの研究を行っています。 これらの分野を個別に専門的に研究するとともに、相互に有機的なつながりを見出すことで、分野の枠を超えた横断的な研究も行われています。 を求めることができません。今は が知りたいもの に対して成立するので、 を変え が求まります。 は「指 を計算していま を求め谷口 隆 教授代数学教育研究分野和田 康載 助教幾何学教育研究分野研究の特色研究トピックス指数和の計算と素数の分布 下にある数式は、何年か前に研究中に発見した式です。式の左辺にある で、それらがみたす関係式です。この式がさまざまな ていくつも式を立てると、連立一次方程式を解くことで、個々の 数和」とよばれる和の一種です。それまでは和の定義から直接カリカリと したが、この式を使うと、複雑でとても計算できそうになかった場合まで、簡単に られるようになりました。 この式は、分かってしまえば証明も簡単です。でも、見つけるのには時間がかかりました。たまたまうまく が計算できたことが何度かあって、何が起きているのだろう、原理のようなものがあるだろうか、と繰り返しあれこれと考え、紆余曲折を経てたどり着きました。最終的に綺麗な式にまとめることができたことが、嬉しかったです。 私は整数論を研究しています。この指数和 の値を使って、素数の分布について新たな定理を証明しました。素数の分布は、双子素数の問題など難問も多いのですが、問題が多様で面白く、研究者をひきつけています。今回は3次方程式および4次方程式の判別式で、「概素数」になるものがたくさん存在することを証明することができました。 指数和 が簡単に求められるようになったと書いたのですが、実はこの式にも限界があって、一定以上複雑な場合は の値がケースバイケースに一定数求められている状況です。その値に規則性を発見することで、もっと難しい場合にも値を求められるようにならないか、考えているところです。結び目の数学 ネクタイ、リボン、ロープなど私たちの身の回りには様々な結び目があります。数学には、結び目を数学的な対象として研究する結び目理論という分野があります。日常生活の中で結び目といえば、紐を結んだ状態のことを想像するかと思いますが、数学において結び目を考える際には、紐の両端を閉じることにします。一例として、下図には、ひとえ結びされた紐の両端を閉じて得られる、三葉結び目と呼ばれる結び目を示しています。 結び目理論では、紐を連続的に変形して移り合う結び目は同じものと見なして、結び目を研究します。紐の結び方はいろいろあるので、様々な種類の結び目があります。では、結び目の種類が異なることを判別するには、どうすればよいでしょうか?結び目に対して定められる値で、結び目を変形することに関して不変であるようなものを「不変量」といいます。不変量を用いて、結び目の種類が異なることを判別することができます。そのため、結び目の不変量を研究することは重要であり、様々な不変量が開発されてきました。 私はこれまで「ミルナー不変量」と呼ばれる不変量を主に研究してきました。ミルナー不変量が、絡み目(すなわち、いくつかの結び目が互いに交わることなく絡まっているもの)をどの程度強力に分類できるかを解明すること、ミルナー不変量が反映する絡み目の幾何的な性質を特徴づけることなどに取り組んできました。また最近は、種々の不変量を統一的に扱う手法を与える「有限型不変量」という不変量の集合にも興味をもち、研究を進めています。代数的な道具である不変量を用いて、結び目・絡み目の幾何的な性質を理解したいと考えています。
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