「数学科って何をしているところなの?」私はこの質問を在学4年間で何度もされました。そんな私も高校生で進路選択をするとき、同様のことを考えていました。 当時の私は中高ともに数学が好きであったことから、数学科に進学を決めました。期待を胸に在学生活がスタートしましたが、すぐに自分の考えは甘かったと思うようになりました。定理の証明を考えようにも、定理そのものが分からないから証明ができない。そもそも定義が分からない。中高で、定義自体が分からないという経験をしたことがなかったため、とても困惑し、しまいには私は本当に数学が好きなのだろうか、と不毛な質問を考える始末でした。 そして迎えた大学4年生。3年生までとは違い、新たにゼミが始まりました。それまで授業内容が分からなくても進み続けることにしんどさを感じていましたが、ゼミは私が数学と一対一で向き合うものでした。自分の疑問に対して考え続ける日々はなぜかとても楽しく、有意義に過ごすことができました。思うようにいかない学生生活でしたが、私はやっぱり数学が好きだと思うことができました。 結局、数学科とは何をしているところなのか分かりません。それでも、ここでは数学の何か根源になるようなものを学ぶところなのではないか、と思うことができました。「数学Ⅳ」を学ぶのでは、と思って入った数学科で「数学0」を取り組むことになった私ですが、そもそも数学とはどういう歴史で作られていたものなのか、高校数学の先の数学とは何なのか、気になる人はぜひ数学科を志すことをお勧めします。現代では、直接の応用を念頭において数学の研究が行われるのは、まれなことでしょう。しかし、数学は物理学、計算機科学、工学、経済学等に応用され、近年ますます他の分野とのつながりを増しています。例えば、アインシュタインが一般相対性理論を創るにあたって用いたのは、リーマン幾何学でした。このリーマンの理論が現れたのは、アインシュタインの理論の50年以上前のことでした。このように、数学自身の中で自律的に発展してきたものが他の分野で威力を発揮することは、不思議と言えば不思議です。しかし、これは、数学のもつ抽象性、一般性が広い普遍性を持っているからではないでしょうか。学生ラウンジ 私が数学科を志した動機は不純でした。明確な目標があったわけでもなく、才能に溢れていたわけでもありません。ただ単に考えることが好きで、悩んで時間を潰せる対象が欲しかったのです。物理でも化学でもよかったのですが、大学では研究をしなければなりません。高校生の頃に行った科学の実験が億劫に感じた一方、紙とペンだけで理路整然とした数学はなんとなく性に合ました。学生の頃は物理が得意で数学の数値計算は特に苦手でしたが、それでもなんとなく数学を選びました。 小学生の頃から学校の教員を目指してきた私は、大学では教員免許さえ取ればいいと思っていましたが、神戸大学数学科での生活が私に新しい選択肢を与えてくれました。学部生の頃、先輩方と自主ゼミをしたり、友達と授業前の空きコマに授業の復習をするようになりました。友達と話し悩みながら考えることはこの上なく楽しく、そのころから数学を数学として正しく好きになりました。 また、私の不出来を頭ごなしに否定せず応援し見守ってくださる恩師との出会いを経て、大学の学部卒業後も数学を続ける道を選びました。これらのうちどれが欠けていても進学は選ばなかったと思います。 教育学部ではなく理学部数学科を推薦してくださった父、神戸大学での友達や恩師との出会い、なんとなく数学を選んだ当時の私に感謝します。 不純な動機で数学科に入学したからこそわかります。真摯に向き合い働きかければ学問は必ず面白く、好きになれます。数学が好きであれば計算が少し苦手なことなど些細なものです。数学は皆さんの飽くなき知識欲を満たしてくれるに違いありません。皆さんにも神戸大学で素敵な出会いがありますように。理学部では、毎年夏休みに高校生を対象として「オープンキャンパス」が開かれます。そこで、数学科の生の雰囲気に接することができます。また、数学科のホームページからも、詳しい情報を見ることができます。さらに、そこにある各教員の電子メールアドレスで教員に直接質問することもできます。共用スペース少人数でのセミナー数学科・数学専攻数学は、社会にどのように役だっていますか。また、他の学問とどう関わっているのでしょうか。ホームページhttp://www.math.sci.kobe-u.ac.jp/index-j.html数学科について、もう少し詳しく知りたいのですが。大槻琴海2022年度学部卒業現在 関西空港検疫所勤務原誠弥2022年度博士前期課程修了現在 博士後期課程2年
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