神戸大学 理学部・大学院理学研究科 2024
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 上記のように、物理学専攻・物理学科では、物質の根源を追求する「素粒子物理学」と物質の形態・性質を研究する「物性物理学」を教育研究の2本柱に据えて、それぞれに理論分野と実験分野とを配しています。組織構成としては、理論物理学、粒子物理学、物性物理学の3講座から学科が構成されています。理論物理学講座(教育研究分野:素粒子宇宙理論、物性理論)では「素粒子・宇宙物理学」と「物性物理学」の理論的研究を行っています。粒子物理学講座(教育研究分野:粒子物理学)、物性物理学講座(教育研究分野:低温物性物理学、極限物性物理学、電子物性物理学)では、それぞれ「素粒子物理学」と「物性物理学」の実験的研究を行っています。暗黒物質観測中のXENONnT検出器 (credit: XENON Collaboration (E. Sacchetti))5脚テンソルを並べた2次元ネットワーク暗黒物質観測の準備を進めているNEWAGEの大型検出器身内 賢太朗 准教授粒子物理学教育研究分野西野 友年 准教授物性理論教育研究分野研究の特色研究トピックス地下から探る未知素粒子「宇宙暗黒物質」の謎 宇宙には私たちの知っている「物質」の5倍以上もの未知の物質が存在していると考えられています。しかも、こうした物質が私たちの宇宙の進化に大きく寄与し、例えば私たちの銀河の形成の元になったと考えられています。こうした未知の物質は「暗黒物質(ダークマター)」と呼ばれ、我々はその性質解明に挑んでいます。暗黒物質は通常の反応確率が非常に小さいため、その反応を捉えるためは大型の実験装置を地下に設置して長期間観測する必要があります。我々はイタリアのグランサッソ研究所の地下実験室で行われている国際共同実験XENON実験と、神岡の地下実験室で行われているNEWAGE(ニューエイジ)実験によって暗黒物質の謎に挑んでいます。 XENON実験では、極低バックグラウンドの液体キセノン検出器を用いて、世界最高の感度で暗黒物質を直接検出する事を目指しています。約8.6トンの液体キセノンを用いたXENONnT検出器は、2020年から継続して観測を行っております。これまでのところ(2023年4月現在) 暗黒物質検出の兆候はありませんが、いつ暗黒物質が発見されてもおかしくないエキサイティングな研究が続いています。 NEWAGE実験は、神戸大学が中心となって推進する次世代暗黒物質探索実験です。NEWAGEは、独自に開発した3次元ガス飛跡検出器を用いて、事象ごとの到来方向を捕え、暗黒物質の確実な証拠を得て、さらに性質解明を目指す実験です。これまでに、方向に感度を持った手法として世界最高感度の成果を挙げており、現在さらに大容積の検出器での探索の準備を進め、暗黒物質の性質解明を目指しています。テンソルネットワークとエンタングルメント 原子や分子の世界での物理法則である量子力学が知られてから、おおよそ百年が経ちました。物質は沢山の原子が集まって構成された凝集体で、その熱的な性質を説明する統計力学が形成されたのも百年と少し前のことです。今ではこれらの物理概念のもと、物質の構造や機能を分析する際にコンピューターで大規模な数値計算を行うことが一般的となりました。計算で扱う変数の数にあたる自由度は膨大なもので、隅々まで忠実に解析を進めることは、まず不可能です。ウィルソンは、重要な自由度から優先的に拾う繰り込み群を導入し、問題解決の糸口を与えました。後にホワイトは繰り込み群の計算手順を改良し、磁性体や超伝導の状態を微視的に解明する密度行列繰り込み群を1992年に提唱しました。これが直接的な発端となり、テンソルネットワークの発展が始まったのです。 テンソルは、大学1年で習う線形代数に登場するベクトルや行列を一般化したもので、それ自体は弾性体力学や相対性理論などの数学的な記法として昔から使われて来たものです。何個ものテンソルを互いに接続して網目、つまりネットワークを組むと、多自由度系の物理量を精密に表現することが可能となります。この網目構造は数値計算にも適していることから、テンソルネットワークは凝集体の計算手段として、広く使われ始めました。そして、量子コンピューターと並走する形で急速に発展し続けています。エンタングルメントが両者に共通する大切な概念で、それは量子力学が形成される頃にアインシュタインらが直面した奇妙な現象から見出されたものです。ここまで読んだ貴方は、既にテンソルネットワークへの散歩道を歩み始めているはずです。

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