私たちは、世紀の都市が達成すべき価値観は「安全」、「環境」および「創生」であると考えています。市民工学科及び専攻では、世紀の市民社会が必要とする「パブリックサービス」の担い手となるための専門基礎知識および創造性を持った国際性豊かな人材の育成を目標としています。伝統的な土木工学の領域を包含した幅広い学際的視点と専門知識を有する実践的で高度な能力を持つ人材の養成を目指しています。自然災害や社会災害に対して安全な都市・地域の創造と、自然と共生する都市・地域を目指した環境の保全と都市施設の維持管理・再生に関する教育を基盤として、都市再生、市民参加、国際化などを包含した幅広い工学領域を世紀型の新しいCivil Engineering(=市民工学)としてとらえ、都市・地域空間の安全と環境共生に関する分野の教育研究を行います。このため、市民工学専攻に人間安全工学及び環境共生工学の講座を設置しています。①安全・安心:地震や洪水など自然災害から私達を守り安全で安心な生活環境を提供すること。②自然共生:自然環境と調和した社会基盤を整備し、未来の人類に良好な地球環境を継承すること。③地域協働:地域市民の意向を反映し個性豊かな都市・地域空間を創出すること。④国際協力:海外での社会基盤整備や災害援助など国際社会の発展を支援すること。学部レベルの教育では、伝統的な土木工学の科目を基盤として、これらの価値目標を達成するための基礎となる科目を用意しました。また、近年の社会基盤事業では、プロジェクトに関する専門知識だけではなく、一般市民に対する説明能力やコミュニケーション能力が不可欠となってきているため、具体的な事例を通じた少人数教育により学生の能力向上を図ります。さらに、時代の要請にあわせ、カリキュラムを柔軟に変更することで、つねに最新の技術を身につけ、かつ、国際的にも活躍できる技術者や研究者を養成する教育体制を整えています。2022年度からは講義科目「数値計算」を新たに開講するなど、今日の情報化社会で土木工学分野に必要とされている、シミュレーション・情報処理技術の習得の支援に力を注いでいます。大学院では、学部段階での基礎的学習内容を発展させ、教育内容を強化します。学部と同様に、伝統的な土木工学の科目を基盤として、市民工学の価値目標を達成するための基礎となる科目を用意しています。 論文作成過程では、研究に対する方法論を習得し、未知なる課題を解決する能力を養います。Civil Engineering12地下鉄工事現場の安全管 理システムを周辺住民に情報開示(ニューデリー)市民工学科・市民工学専攻の教育の特色パブリックサービスの役割フランスのミヨー高架橋カリキュラムの特色Faculty of Engineering / Graduate School of Engineering / Kobe University市民工学科・市民工学専攻安全・安心で環境に調和した市民社会の創成市民工学科・市民工学専攻は、従来、土木工学と呼ばれていた専門分野を母体とする学科・専攻です。学科・専攻の英語名称が “Civil Engineering” であることからもわかるように、橋・鉄道・空港や上下水道など公共利用のための社会基盤施設の建設と保全を通じて、安全で環境に調和した社会を創造することを目指す工学領域です。新たな都市・地域施設の建設だけではなく、老朽化してきた施設の更新や維持管理、そしてそれらを支える技術開発が重要な課題となってきています。最近ではとくに、環境に配慮するとともに市民の意見を広く反映した都市・地域の計画や施設計画が進められるようになり、設計基準や制度の国際標準化も大きく進展してきています。このような背景の下で、私たちは従来の土木工学を包含した幅広い内容を持つ工学領域を21世紀型の新しい Civil Engineering(=市民工学)としてとらえ、土木工学を基盤としつつ安全・安心で環境に調和した市民社会の創生のための基礎的な教育と研究を進める学科として、市民工学科を設立しました。私たちは21世紀の市民社会が必要とする「パブリックサービス」の担い手を志向する学生を受け入れたいと考えています。
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