工事現場の事故防止や豪雨による斜面災害のリスク低減を目的として「光を使って安全・危険情報を原位置(On-Site)にリアルタイムで表示(Visualization)する」研究を推進しています。2006年度に始まったOSVに関する研究活動には、その後、センサメーカー、測量、自動車制御、建設、コンサルタント、ベンチャー企業、国内外の複数の大学、研究機関などの80以上の組織が参入しています。これまでに、OSVプロジェクトは学生の研究指導から企業との共同研究、研究成果の社会実装(日本国内各地、海外ではフィリピン、インド、インドネシア、ベトナム、シンガポール、ラオスなどで適用例あり)までを総合的に包含する流れを現実化しており、人間環境の安全・安心化における新しい概念“On-Site Visualization”を国内的、および国際的に普及させるための活動を展開しています。(芥川研究室)最近では豪雨に伴う水災害や土砂災害が増えてきています。災害から都市を守り、都市の市民の命を救うためには、旧来の枠を超えた総合的な学問の力が必要です。私たちはこれまでの水工学を拡張して、気象学、情報学、電磁気学を応用してレーダーを使って豪雨の発達をとらえ、豪雨の動きを予測して、それを住民の方々に伝えるような研究をしています。気象学では観測と数値計算によって雨粒1粒ずつの成長を追いかけて豪雨の発達や降雨量を正確に予測する研究に役立てています。情報学では理化学研究所計算科学研究センターと連携してスーパーコンピュータを使ったシミュレーションや、タブレットコンピュータを使った住民への情報伝達を行っています。豪雨災害で亡くなる人をゼロにする!のが研究室の目標です。(大石研究室)市民工学専攻には、社会基盤を整備し運用するための理念や方法・手順を研究するために、経済学や統計学・数理最適化など他分野の研究知見を取り入れることが不可欠です。その中でも我々の研究室では、地理空間情報、特に地理情報システム(GIS)と統計学を活用しながら、1)自治体の政策支援のための実証的研究や2) 最先端の統計理論に基づくモデル開発研究を行っています。前者については、例えば大規模小売店舗の立地と商店街活性化の問題や電柱地中化の効果計測といった身近な都市計画の問題から、発展途上国の交通計画の支援といった国際的な研究まで幅広いトピックを扱っています。後者については、「空間統計学」という日本では取り組む研究者が数少ない学問分野において、地理空間ビッグデータを活用しながら、統計モデルの開発や都市・交通分野への応用研究を行っています。(瀬谷研究室)生活に不可欠な電力をまかなうために、わが国では原子力を利用してきました。その結果、使用済みの燃料が蓄積し、これらを再処理したとしても発生する高レベルの放射性廃棄物を処分しなければならないという課題に直面しています。廃棄物を人間の生活圏から遠ざけ、地下深くに封じ込める地層処分が採られようとしていますが、放射性物質の拡散を抑えるバリアシステムについて、安全性を評価するための解析手法の構築が求められています。対象とする時間や空間のスケールの大きさもさることながら、地中で生起する様々な現象・シナリオを考慮に入れなければなりません。国内外の研究機関等と協働しながら、数理モデルの開発やシミュレーションを行い、将来世代に持ち越せない課題の解決に貢献しようとしています。(橘研究室)http://www.shimin.eng.kobe-u.ac.jp15レーダーでとらえた大阪湾から神戸に進む豪雨の3次元の構造赤い部分が強い雨が降っている 黄色の線は雷ニューデリーの地下鉄工事現場でのOSV(赤青の光)による安全管理浸水情報提供タブレットに映される浸水予測地下水の浸潤によるベントナイトバリアの変状予測シミュレーション現地調査であつめた駐車場価格データ総合力で災害から都市の市民をまもれ!地理空間情報×統計学:よりよい社会へ将来世代に持ち越せない課題の解決のためにTOPICS市民工学研究トピックスOSVで世界中の工事現場をより安全に
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