中村知里 准教授木下昌彦 教授神戸大学法学部の特長① 神戸大学法学部で教鞭をとる教員は、国内外で活躍する、各分野を代表する研究者です。学会の理事長や理事を務めていたり、受賞歴のある教員も多く、また、学部全体の科学研究費(国からの競争的研究資金)の獲得率は、全国トップレベルを誇ります。同時に、多くの教員は、公務員試験などの各種国家試験の試験委員、国や地方公共団体の審議会委員などの公職を務めて、社会貢献を行っています。 神戸大学法学部では、教員 1 名あたり入学定員約 3 名という全国トップレベルの「教員と学生の距離の近さ」のなかで、最先端の研究に基づく高度な授業を受けることができます。 私は国際私法を研究しています。外国の企業との契約や外国人との婚姻のように、私人間の法律関係に外国とかかわる要素が含まれる場合、日本の裁判所でその事件を扱うことができるのか、事件を解決するにあたってどこの国の法が適用されるのかといった、特有の問題が生じます。これらの問題を解決するのが国際私法です。 社会のグローバル化に伴って、国境を超えた人の移動も多くなり、国際結婚や離婚、国際的な養子縁組などがなされることも増えました。また、通信技術が発展することで、外国の企業と契約することや、外国に住む人とやり取りすることも容易になりました。そのため、国際私法に関する事案は増加し、さらにはより多様なものとなっています。たとえば、SNS上で他者への誹謗中傷がなされれば、その書き込みはSNSにアクセスできる世界中に拡散されるでしょう。このように結果が一瞬で拡散することは、インターネットが用いられる以前には考えがたかったものです。このような社会の変化に対して、国際私法がどのように対応していくべきなのかを検討することは、私の研究テーマの一つです。 同様の問題に直面するのは日本だけではなく、また「ある事件についてどこの国で判決が下されたとしても、同じ判断がなされる」ことが国際私法の目的の一つでもあるため、他国においてどのように解決が試みられているのかはとても参考になります。私も、EU法やドイツの国内法などにおける議論を参照しながら研究してきました。それらには日本にもそのまま当てはまるものもあれば、日本とは異なる背景事情に基づいているものもあります。そのような相違を意識しながらよりよい国際私法を目指すことは、難しくも大変面白いものだと感じています。 私は憲法を研究しています。憲法とは、国家における統治権の根拠、組織、そして限界を規定する法規範です。日本では 1946 年に制定された日本国憲法が憲法に該当します。日本国憲法は日本国における最高法規として位置付けられ、国会を含むすべての国家権力は憲法に従わねばならず、憲法と矛盾する法律は無効になるのが原則です。 もっとも、日本国憲法の条文の文言は抽象的で、条文の数も103 条しかありません。そのため憲法の条文を見ただけでは、いかなる国家行為が合憲となり、違憲となるかは直ちには判別がつきません。多くの憲法問題は憲法の解釈に委ねられています。日本国憲法によって憲法を解釈する最終的な権限を与えられているのが最高裁判所です。そして、実際に最高裁判所が憲法解釈を示したのが憲法判例になります。立法や行政は、憲法判例を前提に運営されています。現在の日本の憲法の運用は、憲法の条文と憲法判例が合わさって形成されていると言えるでしょう。最高裁判所が設立されてから 75 年以上経ち、膨大な数の憲法判例が蓄積されています。私は、この憲法判例の意味、相互関係を明らかにすることを研究テーマの一つとしています。 憲法解釈は常に政治的判断と表裏一体のところがあります。そのため、憲法解釈には通常の法解釈とは異なる特殊性が常につきまといます。司法による違憲審査は各国において実験と失敗を繰り返してきました。私は、近年、アジア諸国も含め、多くの国の研究者と議論し、それぞれの国の実践を学びながら、日本における政治と司法のあるべき方向性を探る研究をしています。33研究を語る(国際私法)研究を語る(憲法・比較憲法・情報法)優れた研究力
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