Faculty of Economics経済学部先入観を捨て自由な発想で学ぶ金融論 ― お金の流れを通じて社会を読み解く阪本 浩章 准教授大坪 陽一 准教授 経済学と一口に言いますが,そのきちんとした定義を与えることは実は簡単ではありません。様々な学者が様々なことを言っていますし,「経済学とは,経済学者がやっていることである」などというジョークも聞かれるくらいです。 定義が難しい理由のヒントになるのが,今日の経済学に大きな足跡を残したケインズの言葉です。「経済学の大家はもろもろの資質のまれなる組み合わせを所持していなければならない。…彼はある程度まで数学者で,歴史家で,政治家で,哲学者でもなければならない。」なるほど,経済学者は色々な別の顔を持っていなければいけないようです。そして,どの顔がより大事かについては研究者間でも意見が分かれるでしょうから,結果として皆が納得のいくような定義に到達しにくいのでしょう。 そう聞くと,皆さんは経済学をやるには他のことをたくさんやらなければならないと思って,尻込みするかもしれません。しかし上のケインズの言葉は,経済学の世界とはややかけ離れて見えるような学問分野の知識も,実は経済学の勉強に役に立つという風にも読むことができます。とりわけ,今まで皆さんが好きだった分野・科目の知識が,経済学の理解を助けることになるかもしれないのです。例えば歴史が好きな人は,過去に起きた経済的発展の理解を通じて現状を読み解こうとするアプローチに共感を覚えるでしょう。また,数学を知っていると,人々は数学の問題を解くがごとく消費などもろもろの行動計画を立てていく,という数理的なアプローチが頭に入りやすくなります。そんな具合です。 経済学は,様々なアプローチが切磋琢磨しながら共存している分野です。だから皆さんは,その中で自分に合ったものを選べばよいのです。経済学自体は一つの険しい山に例えていいかもしれませんが,ならばその裾野は意外に広いというべきです。どうか皆さんには,自分なりのやり方で,大学在学中をかけて登る価値のあるこの山に挑んでほしいと思います。教員からのメッセージ応用理論ファイナンス 経済学は,いわゆる「経済」についてのみ考える学問であるという印象を持たれるかもしれません。ただ実際には,経済学の守備範囲はずっと広く,人が関わる営みであればいずれも分析の対象となります。広義には,人間の行動やその総体としての社会現象を深く理解し,社会の仕組みをうまく設計することによって様々な問題を解決しようとする学問,それが経済学であると言ってよいでしょう(これでも狭義かもしれません)。神戸大学の経済学部・経済学研究科には,そのような経済学の広大な領域をカバーできる多種多様な教員が所属しており,学生の自由な発想を尊重する雰囲気があります。六甲台の恵まれた環境の中で,「こうでなければならない」という先入観に縛られることなく,みなさんが創造的な学生生活を送られることを願っています。 金融論,そしてファイナンス研究は,「お金の流れ」を通じて,社会や経済のしくみを理解する学問です。企業はどうやって資金を調達し,どんな投資判断を行うのか。株式や債券,為替などの金融市場では,さまざまな情報や人々の期待がどのように価格に反映されるのか。こうした問いに答えるために,わたしたち経済学者は,経済理論とデータ分析の手法を組み合わせて,複雑な現実を解き明かそうとしています。最近では,国際情勢や気候変動,さらには SNS 上での投資家のやりとりなども,価格変動や市場の動きに大きな影響を与えるようになっています。金融論は,経済学のツールを用いて,日々変化する世界を読み解くレンズなのです。神戸大学大学院経済学研究科・経済学部で,あなたもこのダイナミックで奥深い世界に触れてみませんか?経済学とは −様々な角度からアプローチ可能な,懐の広い学問−
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