高校数学が好きだった私は、数学をより深く学びながら教員免許も取得できる理学部数学科を選びました。そんな私を待っていたのは「講義で学び、それを何度も考え続けて初めて理解できる」そんな世界でした。 これまでの「授業で理解し、テストに向けて演習する学習スタイル」とは異なり、1 つの概念を納得するまで何時間も考え続ける日々。それは決して楽ではありませんでしたが、その過程で培った学びに向かう姿勢は、今でも大いに役立っていると感じます。私が 1 年生だった頃は、新型コロナウイルスの影響で仲間と直接協力しながら学ぶ機会が少なく、孤独を感じることもありましたが、状況が徐々に改善され、友人と教え合うことで理解が深まる楽しさを実感しました。 さらに、私は数学科の学びに加えて教職課程も履修していました。朝の早い1限や1日の最後の 5 限に授業が入ることが多く、大学の夏休みには教育実習もありました。履修登録や時間管理を一人でこなすのは難しく、同期や先生方の支えがなければ乗り越えられなかったと思います。 4 年次から始まるゼミでは、それまでの講義とは異なり、より細かく専門的な内容の指導を受けることができます。私のゼミは先生一人に対して学生二人体制で、より深い理解を得ることができ、研究や学びが一層充実したものになりました。多忙な日々の中で、先生方からの温かいサポートを受けることができ、学びを続ける力を与えていただきました。 この 4 年間で、少しは論理的に考える力が身についたのではないでしょうか。そして何より、数学の奥深さと楽しさを改めて実感しました。数学を通じて培った力を、これからも様々な分野で活かしながら伸ばしていきたいと思います。ホームページhttp://www.math.sci.kobe-u.ac.jp/index-j.html現在 高校教員(奈良県高校数学)学生ラウンジ林 泰地2024 年度学部卒業共用スペース理学部では、毎年夏休みに高校生を対象として「オープンキャンパス」が開かれます。そこで、数学科の生の雰囲気に接することができます。また、数学科のホームページからも、詳しい情報を見ることができます。さらに、そこにある各教員の電子メールアドレスで教員に直接質問することもできます。園尾 真由2024 年度博士課程前期課程修了現在 西日本旅客鉄道(JR)総合職・技術 IT 系少人数でのセミナー現代では、直接の応用を念頭において数学の研究が行われるのは、まれなことでしょう。しかし、数学は物理学、計算機科学、工学、経済学等に応用され、近年ますます他の分野とのつながりを増しています。例えば、アインシュタインが一般相対性理論を創るにあたって用いたのは、リーマン幾何学でした。このリーマンの理論が現れたのは、アインシュタインの理論の 50 年以上前のことでした。このように、数学自身の中で自律的に発展してきたものが他の分野で威力を発揮することは、不思議と言えば不思議です。しかし、これは、数学のもつ抽象性、一般性が広い普遍性を持っているからではないでしょうか。 私が理学部数学科に進学した理由は、他教科よりも数学が得意だったからと、将来どんな業界で働きたいかが決まっていなかったので実学的な学部を避けたからで、特に強いこだわりはありませんでした。 大学生になれた解放感で最初はあまり勉強をせずにいたのですが、序盤をおろそかにしただけで全く大学数学についていけなくなりました。大学数学は特に基礎がわかっていないと太刀打ちできません。基礎がわかっていなくても公式だけ覚えて何とかなるのは高校数学までで、大学数学ではむしろその公式の導出を考えるので、基礎から学ばないと本当についていけません。これに気づいたのはもう1年生の終わりで、その時には序盤に立ち返って遅れを取り返す気力は湧きませんでした。 単位をなんとか取るだけの大学生活を送っていましたが、総合教養科目のデータサイエンスの講義を受け、それをきっかけに統計学に興味が湧きました。そして統計学を学ぶために、学部生活後半にしてやっと基礎の学びなおしを始めました。基礎が身につくと論文や文献に書いてあることがわかるようになってくるので、次第に能動的な姿勢で数学を学ぶことができるようになりました。 数学を学ぶことを通して、行間を埋めること、つまり少しの論理の飛躍でも根拠を明らかにすることが物事を深く理解することにつながると実感しました。なにかを新しく学ぶとき、行間を埋めると内容自体を理解できるほかに、主張と主張のつなぎ目を意識することで全体の流れも理解できるので、その内容の本質の理解にも役立てられると思っています。統計学について深い知識を得られたのも大きな価値がありますが、行間を埋めるクセが付いたのは数学科・数学専攻で過ごした中で一番よかったことだと思っています。 大学数学の難しさに何度も心が折れかけましたが、学問もそれ以外もたくさんのことをこの学生生活で学べました。今ではいい選択をしたと自信をもって言えます。数学科について、もう少し詳しく知りたいのですが。数学科・数学専攻数学は、社会にどのように役だっていますか。また、他の学問とどう関わっているのでしょうか。
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