神戸大学 理学部・大学院理学研究科 2025
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村田 優衣(2024 年度博士前期課程修了)現在 株式会社 島津製作所勤務物理学実験 2 の様子松原 愛帆(2010 年度学部卒業)現在 東京理科大学勤務最近発展のめざましいインターネットやコンピュータなどのテクノロジーも、そのおおもとの基盤は物理学にあります。ですから物理の基礎をしっかり学んでおくことは、社会に出てからも大変有益であるといえるでしょう。また物理学はものごとをその根源にさかのぼって理解しようとする学問です。物理学科の講義や演習・実験を通じて、どんなことでも自分でじっくり考え、確かめていく習慣をつけることは将来どのような進路に進んでも必ず役にたつはずです。物理学科で行っている研究やその意義を広く知ってもらうために、毎年サイエンスセミナーを開いています。さらに、高校生を対象とした模擬授業を実施しています。また、物理学科のホームページでも最新の研究成果を見ることができます。物理学科のホームページに各教員の電子メールアドレスがのっていますので利用して下さい。また、理学部では毎年夏休みに高校生を対象としたオープンキャンパスを実施していますので、その機会を利用することもできます(時期はホームページに掲載予定)。 普段の生活であまり意識しない物理ですが、学んでいくと物理は決して遠い世界の話ではなく、身の回りの不思議に答えてくれる学問なのだと実感します。「なぜ海は青いのか」「物質の重さは何で決まっているのか」。当たり前に受け入れていたことへの疑問の奥に、物理の面白さが広がっています。 高校の進路選択の際、理系科目が得意ではなかった私が物理に興味を持ったのは「宇宙の謎が知りたい」というシンプルな好奇心からでした。世の中の不思議を追求するような基礎研究を、深く掘り下げられる場はそう多くありません。「挑戦するなら今しかない。」そんな思いが、私の背中を押してくれました。 学部の 3 年間で物理の基礎を学んだ後、研究では、物質の最小単位である素粒子を対象とする国際共同実験に携わりました。理論上は存在が予測されていても、未だ観測されていない素粒子は多くあります。宇宙の謎を解き明かすためにも、私たちはそのような素粒子を探索しなくてはなりません。研究生活を振り返ると、学会や国際会議をはじめ、勉強会への参加やスイスへの長期出張など、やりたいと思ったことには快く挑戦させてもらえました。また、自分の考えを積極的に伝え、議論し合える環境であったと思います。他大学の先輩に、「神戸大の学生は、みんな自分の研究に自信を持って話せていて羨ましい」と言われたことがありますが、そういった傾向はこのような環境からきているのかもしれません。 また、物理分野では他大学や国際的な繋がりが強いことも少なくありません。私も研究を通じて、大学や国を越えて色々な人々と関わるチャンスを多く得ることができました。「言語の違いがあっても、数式や図を通じてお互いの研究や伝えたいことを理解できる」ということを体験したとき、「物理」という新たな共通言語を手に入れたような、ワクワクした気持ちになったことを覚えています。神戸大学で物理を学ぶことは、この文章を読んでいる皆さんにとっても、きっと身近な不思議に対する答えや、新しい世界を広げるきっかけになってくれるはずです。力学は物理の基本。大学に入って初めての物理専門科目です。測定できなければ、物理ではありません。 最近久しぶりに神戸大学を訪れ、うりボーロードを歩きました。木々の隙間から溢れてくる吹奏楽の音色がとても懐かしく、当時の思い出が一気によみがえってきました。 私にとって神戸大学での学生生活は、学問的な基礎を築くだけでなく、多様な人との繋がりを通して自分を成長させることのできたかけがえのない時間でした。理学部物理学科は少人数制で、まるで高校のクラスのような親密な距離感の中で 4 年間を共に過ごします。そのため、物理学科の同級生とは「同じ学問を学ぶ仲間」という枠を超えて、バーベキューや旅行など、学内外で多くの楽しい思い出を作ることができました。今でも当時の友人たちとは連絡を取り合い、支え合う関係が続いています。 また、神戸大学の先生はとてもフレンドリーで、日常的に気軽に質問や相談ができる雰囲気があります。講義で疑問に思ったことをすぐに先生に尋ねたり、議論を深めたりできる環境が、私自身の好奇心をさらに引き出してくれたと感じています。カリキュラムも、物理現象の不思議さを実際に体験できる実験と、それを理論的に理解するための講義がうまく組み合わされており、「なぜこの現象が起きるのか」という問いをもちながら学び進めることができる工夫がなされていました。 現在、私は東京理科大学で熱電変換材料に関する研究に携わっています。身の回りに存在する廃熱を電力へと変換するエネルギー変換技術の進歩は、持続可能な社会の実現に不可欠であり、大学で学んだ物理の知識を社会に役立てることができることに、大きなやりがいを感じながら研究に取り組んでいます。研究を進める上では、物理学の知識に加えて、さまざまな分野の研究者との連携も欠かせません。その中で、神戸大学で培った物理学に裏打ちされた論理的な思考や、自分の考えをわかりやすく伝える力は大きな強みになっていると実感しています。 皆さんも、ぜひ神戸大学での学びの中で得られた理解や発見を自分なりの言葉にし、人に伝えることを大切にしてください。そして、授業や研究活動の中で、自分だけの問いを見つけてほしいと思います。物理は、決して与えられた問題を解くだけの学問ではありません。自由に発想し、未知の世界に挑戦していける、非常に創造的な学問です。 神戸大学での生活が、皆さん一人ひとりにとって、実り多く、かけがえのない時間となることを心から願っています。現代物理の根幹にあるのが量子力学古典力学の授業風景量子力学 1 の授業風景ホームページhttp://www.phys.sci.kobe-u.ac.jp/物理学科で行われている研究の内容はどのようにして知ることができますか?物理学科の先生と直接コンタクトをとることはできますか?物理学科・物理学専攻物理学科で学んだことは社会でどのように役立ちますか?

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