香西 夏葵2024 年度博士前期課程修了(修士(理学)取得)現在情報通信系の会社に勤務海上実習(左)、オープンキャンパス(中)、懇親会(右)神野 天里 現在 博士後期課程 2 年「一つの部屋に収まるコンピュータで、銀河から惑星まで天文学的スケールの大きさの天体をシミュレーションできる」 学部生時代に耳にしたこの言葉に心を奪われて以来、私は現在も日々、研究に励んでいます。 近年のコンピュータの大規模化に伴い、シミュレーションによって天文学の問題を扱う「シミュレーション天文学」が急速に発展してきました。そのなかで私は、「コンピュータシミュレーションを駆使して惑星形成過程の全貌を解き明かすこと」を目標に研究を行なっています。ここでは、私が惑星形成に興味をもったきっかけと、現在に至るまでの歩みを、惑星学科での学びとともにお伝えしたいと思います。惑星形成に興味をもったきっかけは、学部 2 年生の頃に立ち寄った書店での出来事です。私は当時から理工学書を集めるのが好きで、その日も大型書店で理工学書を眺めていました。いつもは物理学の本ばかり見ていたのですが、その日はふと、天文学の棚に目がとまり、手に取った一冊が「惑星形成の物理」という本でした。パラパラと読み進めると、その内容の多くが学部で学ぶ基礎的な物理で記述できるという点に大きな魅力を感じました。シンプルであるがゆえに奥深く、私はすぐにこの本の虜になりました。しかし、いくらシンプルとはいえ、専門書を一人で読み進めるのは大変です。そこで、当時学部 3 年生だった私は、現在の指導教員である斎藤貴之先生に相談し、先生とゼミ形式でこの本を 1 年かけてじっくり読み進めることにしました。今振り返っても、先生と学生が一対一で議論しながら学べる環境は、少人数教育を重視する神戸大学理学部、そして惑星学科ならではの魅力だと思っています。こうして 3 年次に惑星形成の基礎を学んだ私は、4 年次には計算惑星学教育研究分野に進みました。この研究室を選んだ理由は、惑星形成の研究ができることに加え、学科での学びを通じて出会ったプログラミングの面白さにも惹かれていたからです。惑星学科では、惑星科学に加えてプログラミングを学ぶ機会が豊富にあり、それをきっかけに数値計算やアルゴリズムに夢中になる学生が毎年現れます。私自身もその一人で、プログラムで物理現象を再現できることに大きな魅力を感じ、次第にこの分野を深く学ぶようになりました。そうした中で出会ったのが、冒頭で述べた「一つの部屋に収まるコンピュータで、銀河から惑星まで、天文学的スケールの大きさの天体をシミュレーションできる」という言葉です。この言葉を通して、計算惑星学教育研究分野では、自分の興味である「数学的アルゴリズム」と「惑星形成」という二つがまさに交差していることに気づきました。そのとき、「ここが自分の進むべき道だ」と確信し、今もその道を歩み続けています。ここまでお話ししてきたように、惑星学科には、授業や先生との関わりを通じて自分の興味の幅を広げ、興味をとことん掘り下げていける環境があります。皆さんもぜひ、惑星学科で「自分だけの興味」を見つけて、深めていってもらえるとうれしく思います。 惑星学科に興味を持ってくださっている方へ、僭越ながら私の惑星学科での経験について、書かせていただきます。 私は、地球や惑星の勉強が面白そうという、単純な興味で惑星学科に入りました。しかし、実際に入ってみると、色々なことをしている学科だと感じました。神戸大学所有の船に乗って海底の調査を体験したり、フィールドで採取した岩石を観察したり、はたまたプログラミングを通して地球の構造について計算してみたりと、多様な経験を積むことができました。経験を積む中で、徐々に私は、地震を研究してみたいと思うようになりました。なぜなら、私の出身県は南海トラフ地震の被害を受けると言われており、その防災に少しでも貢献できたら良いなと思ったからです。 その後、固体地球物理学という研究室で、地球内部の構造をプログラミングによって再現する研究に取り組み始めました。具体的には、四国・九州下に沈み込んでいるフィリピン海プレートは、九州の直下で不自然なほど急激に曲がっています。この原因が、地下深くから上がってきたホットプルーム(=マントルの上昇流)によって押されたものであるという説が存在します。この仮説を、数値シミュレーションを用いて検証するという研究でした。内部構造についてのプログラミングコードを理解し、作成し、試行錯誤を繰り返しながら、プレート形状を再現可能なシミュレーションを完成させるべく、研究に打ち込みました。自分で考え、これならうまくいくんじゃないか、という条件で本当にうまくシミュレーションが再現できたときは、この上なく嬉しかったです。 研究と並行して、様々な場所で開かれる学会や研究会にも参加しました。発表した研究内容について、他の研究者の方々から有益なアドバイスをいただきました。また、その方々の発表内容を聴き、新たな知見を得ることで、自分の研究の展開が広がるという研究者独特の楽しさを感じました。 最終的には、目標であった九州下におけるフィリピン海プレートの急激な曲がりについて、ホットプルームを用いて再現することに成功しました。これにより、研究室に入る際に漠然と思っていた、南海トラフ地震への防災減災に対して微量ながらも貢献できたのではないかと感じています。 私のこれらの経験が、惑星学科に興味を持ってくださっている方にとって少しでも有益な情報になっておりましたら、幸甚です。惑星学科には小惑星探査はやぶさ、はやぶさ 2、金星探査あかつきに主要な貢献をした教員がおり、国内外の探査機が取得したデータを解析する研究、探査に関連する理論研究も行われています。これらの内容を授業で学べるほか、卒業研究や大学院では自分で関連する研究をすることも可能です。大学院惑星学専攻の卒業生の中には計画進行中の探査に関わって活躍している人もいます。私たちは日本の惑星探査の将来を担う人材の育成を目指しています。海の底では、約 60,000km(地球1周半の長さ!)にもわたる巨大山脈があり、地球上の火山活動の約 8 割が海の中で起こっています。ところが、この活動は深海底で起こっているため、人類はその噴火活動を一度も目にしたことがなく、こうした火山活動が地球システムのなかでどのような役割を果たしているかなど、まだまだわからないことがたくさんあります。惑星学科では、このような未知の領域に取り組んでおり、海上や海底で地球物理的な観測をする研究室や、深海や陸上の堀削を通して最先端の科学を推進しているグループがあります。アカデミックな分野(大学や研究所)だけでなく,公務員・企業への就職者もいます。その内訳も幅広く,様々な分野で活躍しています。つまり自分の研究対象が就職先に直接関係なくても,研究過程で何を学んで経験し身につけたかが重要となります。具体的な数字に関しては別欄にありますので参照してください。ホームページhttp://www.planet.sci.kobe-u.ac.jp/日本は四方が海で囲まれているため、海は身近な存在です。神戸大の惑星学科では、海に関わる研究が行われているのでしょうか?惑星学科・惑星学専攻を卒業した学生の進路はどのようなものがあるのでしょうか?惑星学科・惑星学専攻惑星探査に興味がありますが、それに関係したことは学べるのでしょうか?
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