ベントナイト(膨潤性粘土) カオリナイト(非膨潤性粘土) 土木計画学とは、よりよい社会を実現することを目指して、私たちの生活を支える社会基盤を整備し運用するための理念や方法・手順を研究する学問体系です。よりより社会について考えるためには、工学分野の知識だけでは十分な答えをだせないため、工学系の学問でありながら、社会科学や人文学の要素が大きいという特徴があります。例えば、我々の研究室では、取り組みの一つとして、医療の均霑化̶医療サービスの地域格差をなくし全国どこでも誰もが等しく高度な医療を受ける権利を享受できるようにすること̶を支援するためのモデル分析研究を行っています。これは、交通や人口等の様々なデータから、将来を見通すためのモデルを構築し、地域の将来患者数に関するシナリオ分析を行うというものです。下図は、2050年の患者数をモデルで予測した結果ですが、人口減少や高齢化等により、多くの地域で病院が撤退する可能性が示唆されています。右図は、これに対する政策的な対応を検討したシナリオです。このように、我々の研究グループでは、最先端の経済・統計・数理計画の理論を応用しながら、国土計画・都市計画に資するためのモデル分析研究を行っています。(小池研究室)脱炭素社会の実現に向けて原子力に対する期待が高まる一方、放射性廃棄物の問題にも着実に取り組んでいかなければなりません。原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物は、地下300m以深に地層処分することが検討されています。地層処分の特徴は、数万年以上の長期にわたる安全確保を考えることです。そのためには、地層処分施設の長期的な状態変遷の予測が重要となります。地層処分施設の熱/水理/力学/化学的な状態は長期的に変化していくため、施設の状態変遷を評価できるマルチフィジックスな解析手法の開発を目指しています。特に、地層処分施設を構成するバリアの一つとして用いられるベントナイトと呼ばれる膨潤性粘土に着目し、国内外の研究機関と連携しながら、室内試験による材料特性の把握とその数理モデル化に関する研究を行っています。(髙山研究室)ほぼ全ての主要な道路や高速道路の下に、光ファイバケーブルが入っていることはご存知ですか。光ファイバケーブルは元々、通信用として敷設されたものですが、使用していないファイバを利用し、最新の光ファイバセンシング技術によって、約50kmの道路沿線上の任意の地点の振動を観測することができます。道路上の様々な振動を聴診器で測るようなもので、市民工学の研究者も都市インフラのお医者さんとして、日頃の交通振動だけでなく、地震動さえも計測し、研究に役立てようと考えています。これまで、1箇所ごと地震計を設置して、地震観測をしていましたが、この技術によって数千箇所のセンサで同時に地震動を観測することができます。また、沿線上の地盤の揺れやすさを線情報としてみることができるので、既存のボーリング調査結果を補完することもできます。さらに、これまで定点で観測していた交通量の計測も、全線での交通量も計測できます。都市インフラの維持管理にも最新技術を導入することで新しい展開が期待されます。(鍬田研究室)最近では豪雨に伴う水災害や土砂災害が増えてきています。災害から都市を守り、都市の市民の命を救うためには、旧来の枠を超えた総合的な学問の力が必要です。私たちはこれまでの水工学を拡張して、気象学、情報学、電磁気学を応用してレーダーを使って豪雨の発達をとらえ、豪雨の動きを予測して、それを住民の方々に伝えるような研究をしています。気象学では観測と数値計算によって雨粒1粒ずつの成長を追いかけて豪雨の発達や降雨量を正確に予測する研究に役立てています。情報学では理化学研究所計算科学研究センターと連携してスーパーコンピュータを使ったシミュレーションや、タブレットコンピュータを使った住民への情報伝達を行っています。豪雨災害で亡くなる人をゼロにする!のが研究室の目標です。(大石研究室)http://www.shimin.eng.kobe-u.ac.jp市民工学研究トピックスベントナイトの膨潤の様子(左)と膨潤圧を計測する装置(右)レーダーでとらえた大阪湾から神戸に進む豪雨の3次元の構造赤い部分が強い雨が降っている 黄色の線は雷図-国道の光ファイバケーブルから2kmの区間(400チャンネル分)の振動データをコンター図:上り線と下り線の車両の振動を可視化することができる。浸水情報提供タブレットに映される浸水予測患者数変化の推計結果50km先の振動を観測できるインフラ聴診技術総合力で災害から都市の市民をまもれ!医療均霑化支援のためのモデル分析研究よりよい未来に向けた技術開発:次の世代のためにTOPICS
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