國學院大學 2021 入学案内
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ホテルが地域の“個性”をまとう。その発想は、國學院大學の姿勢や学びともつながっています。今、求められているのは、ローカルな文化や価値を、グローバルな客観性に基づいて世界へ発信できる力。東急グループでホテル開発やインバウンド(訪日外国人旅行)の戦略づくりに携わる卒業生の武井 隆さんに、國學院大學で身に付けた力がどのように現在に活きているかを語っていただきました。地域の個性を感じさせるホテルで日本ブランドを発信私の仕事は、どの場所にどのようなホテルを出店すべきかを考えること。そのような業務を起点に、現在は、東急グループ全体の視点でホテルをはじめとするホスピタリティ事業の統括や戦略の構築にも携わっています。ホテル業界は、2012年頃を境に大きく変わりました。海外から日本への旅行者が急増したことで需要が高まり、不動産などの異業種の企業も次々に宿泊業へと参入してきました。このまま進むと、いつか市場は飽和する。そのときまでに選ばれるホテルになるにはどうしたらいいか。私たちは徹底的に考えました。これまで日本のホテルチェーンは、全国どこでも均一な空間で、同じ質のサービスを提供することにブランドの価値を置いてきました。もちろん今も、その安心感を求めるお客さまはいらっしゃいます。けれども海外からの旅行者はそれで満足するのか。東京と京都のホテルが金太郎飴のように同じ造りで、「これがおもてなしだ」と胸を張れるのか。私たちは発想を転換し、インバウンドのお客さまの過ごし方に合わせて、若い層向けのブランドではバーなどを充実させるとともに、その土地が持つ雰囲気をホテルの個性として表現する方針を定めました。例えば、工業地帯に接する川崎のホテルにはウェアハウス(倉庫)のような打ちっ放しの内装を施し、ここ渋谷ストリーム上階のホテルには、クリエイティブな人々の感性を刺激する、渋谷の夜や高いファッション性を表現した空間をしつらえています。こうした取り組みを進めていることもあり、「日本の地域性を意識しながら世界との関係を築く」という國學院大學のグローバル教育の考え方には、共感を覚えます。あるいは、私が「地域を軸にしたブランドづくり」に行き着いたのも、大学時代の学びとつながっているのかもしれません。そう感じたのは、2019年11月にオープンした「大阪 エクセルホテル東急」の開発を手がけたときのことでした。御堂筋という通りの名の由来にもなった、南御堂こと難波別院。その寺院山門に宿泊施設をつくることになり、「ホテルを通じて日本の文化を発信するチャンスだ」と私は心を躍らせました。当初は寺院の静謐さとくつろぎを重ね合わせた施設の提案を考えたのですが、どうも発信力が弱いような気がする。そもそも寺院や神社というのは、昔から人が集まる地域の中心だったはず。それならば、もっと「陽」の面を強調し“体験”の面白さを軸に据えた方が、なんばの土地柄008撮影場所:渋谷ストリームエクセルホテル東急

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