國學院大學 2021 入学案内
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観光まちづくり学科入学定員 300人 メインキャンパス 横浜たまプラーザ(仮称)設置認可申請中観光学部 学部長(就任予定)西村 幸夫 教授1952年生まれ。博士(工学)。東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院修了。東京大学副学長、マサチューセッツ工科大学客員研究員、コロンビア大学客員研究員、フランス社会科学高等研究院客員教授、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)副会長などを歴任。専門は都市保全計画、景観計画、歴史まちづくり、歴史的環境保全。地域に関わり、その魅力を掘り起こしていける人材を育てたい。地域の魅力を再発見し、活かし続ける“観光まちづくり”を私は都市計画を専門に、歴史的環境の保全に携わってきました。しかし、価値ある建物や路地を守っても、空き家ばかりで地域が元気にならなくては意味がありません。そのため、この20年ほどは、建造物などのハード面だけでなく、祭礼やコミュニティなどのソフト面も含めて地域の魅力を再発見し、地域が主体となって地域の環境を資源として活かしながら地域経済の活性化につなげていく、 “観光まちづくり”の研究を行っています。大型ホテルや観光スポットが客を囲い込み、近隣のライバルに勝てばよかった時代は終わりました。今は地域がひとつになって自身の魅力を分析し、観光資源を発掘しつつ、公共デザインや交通インフラの在り方とともにトータルにデザインして戦略的に情報を発信していかなければ、旅慣れた人々にも、SNSで旅行先を比較する世代にも、地域は選んでもらえません。また、それを実現するために一人でできることは限られているため、多様な分野、立場、考え方の方々と議論して、ともに取り組んでいく力も求められています。すなわち、“観光まちづくり”の世界では、視野を広く持ち、分野の別なく協働できる力がこれまで以上に必要とされているのです。文系と理系の垣根を越えた学びで課題解決の可能性を広げる工学系出身の私が、文系の学びで知られる國學院大學の学部長となることに違和感を覚える方もいるかもしれません。しかし“観光まちづくり”の現場では、文系理系の境目はありません。地域に向き合い、地元の方々が見過ごしている地域の強みを探る際に、例えば、郷土料理は取り上げるけれど自然環境は専門外だからスルーする、といった姿勢では、地域の魅力を客観的に捉え、適切に活かしていくことはできないのです。本学部は、文系と理系の垣根を越えた学びが特長でもあります。というと、及び腰になる受験生がいるかもしれませんが、何も理系の科目を全員必修にするわけではありません。文系でも理系でも得意な科目で受験ができ、入学後は、各自の関心と目標に沿って学びたい科目を選択できる仕組みです。例えば、歴史的建造物のプロジェクションマッピングのアイデアを思いついたとします。そこでプログラミングや照明の知識がないから…と諦めるのはもったいない。文系と理系の垣根を越えた学びは、地域の課題に対し、歴史や文化、統計やデータサイエンス、アートなどあらゆるアプローチを用い、協働しながら解決を目指せるよう、学生の可能性を広げるひとつの手段なのです。人口減少の現代、教育や医療などを量的に整備していくまちづくりには限界があります。しかし、観光という視点を取り入れると、不便であることすら、土地の魅力になり得ます。地域の弱みを強みに転換する、前向きで創造的な地域振興がここにはあるのです。社会が停滞しがちな今だからこそ、回復力を持った地域社会の構築が必要です。本学部で地域を見つめ、課題解決を目指して取り組む経験は、地域への貢献を目指す学生にとってはもちろん、多様な分野での活躍を願うあらゆる学生にとって大きな財産になると信じています。108

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