國學院大學 入学案内 2022
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文学部教授 谷口 雅博日本の現存最古の書物『古事記』。世界のはじまり、神々の出現、天皇統治の起源と継承など、日本の成り立ちが劇的に記されており、イナバノシロウサギやヤマタノオロチ退治など、広く親しまれている話も多く載っています。しかし、シロウサギ(原文では「素兎」)のシロは何を意味するのか、ヤマタノオロチのモデルは何なのかなど、不明な点ばかりです。『古事記』を読む上で大事なのは、こうした“わからなさ″と向き合う、ということでしょうか。そもそもなぜ正史としての『日本書紀』と並んで『古事記』が編纂されたのかさえ、未解明です。わからないから読み、調べて考える。『古事記』の楽しみは尽きることがありません。現代の人々がアクセサリを好むように、古代の人々もまた、装身具として工芸品を用いました。その代表格が、皇位の象徴として知られ「三種の神器」にも含まれる「勾玉」です。古墳時代前期の3・4世紀頃に非常に貴重とされたのは翡翠製のもの。その後、5世紀以降には赤いメノウや透明の水晶の「勾玉」も好まれるようになりました。倭国と朝鮮半島の交流が活発化し、金属製品などの新しい文化・技術が入る中で、日本人の色彩感覚が変化したことが推測できます。しかし「勾玉」は、7世紀以降に消えていきます。価値観の変化、あるいは身分を冠の色で示す冠位十二階の制度などが生まれ、権威を示す装身具としての意味を失ったのかもしれません。歴史から分かる「勾玉」の由来を読み解くと、「伝統」としての輪郭が浮き彫りになってきます。古代の日本列島で受容され、発展し、今日まで受け継がれてきた伝統の品々。その長い歩みを知ると、現代の神祭りへとつながる祭祀のルーツが見えてくるのではないでしょうか。神道文化学部教授(國學院大學博物館館長) 笹生 衛法学部教授 長又 高夫日本律令や公家法、武家法といった前近代の法からは、日本の法文化の特徴がうかがえます。しかも、法を制定・運用する際にも独自の思想が認められ、それは断絶することなく近代法にまで引き継がれています。現在の民事訴訟でも和解を重視する傾向がありますが、これなども前近代以来の特徴です。法制史料を読み解きながら、日本の法文化の特徴を考えます。知の起源を解き明かす研究者たち勾玉 茨城県大洗町鏡塚(日下ヶ塚)古墳出土(國學院大學博物館所蔵)物事の本質を探る学びは、國學院大學メディアにて他にも多数紹介しています。▼https://www.kokugakuin.ac.jp/mediaKOKUGAKUIN UNIV. 003

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