國學院大學 入学案内 2023
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007  下村先生の研究分野の一つが「風景計画論」ですが、風景を計画するとはどういうことなのでしょうか? 私の専門は、広くは造園学という分野になります。造園とは、家の庭など屋外空間のデザイン。視野を広げ、「街の造園」という見方で捉えると、公園や都市の樹木にまで研究対象が広がります。それらがつくる風景を読み解き、今後の街の風景のあり方やつくり方を考えるのが風景計画論です。身の周りに見えている風景には、地域の自然、歴史や文化、地理的背景などによって実にさまざまな特徴が現れているのをご存じですか?例えば沖縄・備瀬の集落では、屋敷の周りを大きな木々が囲っており、全体的には森の中に家々があるように見えます。これは屋敷林と言って、備瀬の場合は家屋や畑を厳しい台風や日差しから守るために、森のような形状になっています。この屋敷林は、有名な島根・出雲の築地松をはじめ、東京・武蔵野台地など各地で見られ、それぞれ見た目や木の種類が異なっており地域に適した形になっています。また、屋根が作る風景も場所によって全く違いますね。茅葺き、瓦といった材質の違いはもちろん、瓦一つとっても土地の土質由来の色が発現しています。このように、地域が各々の自然とつき合いながら年月を過ごすうちに形作られるものが風景なんです。今、目の前にある風景がどのようにできたのかを地域の物語を紐解いて探り、これからの時代へ「その地域らしさ」を継承していこうとするのが私の取り組む学問です。  なるほど。屋根の瓦にまで地域差が出るとは全く意識したことがありませんでした。仕方ないことなんです。幼いときには何気ない周りの風景の構成要素まで注視しないでしょうし、大人になって故郷を離れ別の街に移り「何か違うな」と思ったとしても、それが具体的に何なのかまではわからないのが普通ですから。さらに、近年は家屋等の建設材料が工業製品中心になり、地域に関係なく風景が均質化してきてしまっています。何がよくないのかと思われるでしょうが、これは地域のアイデンティティ、住民が共有するものの喪失を意味します。すると、観光資源としての価値究める02

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