國學院大學 入学案内 2023
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KOKUGAKUIN UNIV. 014製造はどのように始まったのでしょうか?自分の将来を考えるちょうどその頃、家業も転換期に来ていました。通常、タオルの製造には大量の化学薬剤を必要とし、その処理水が環境汚染の一因となっているという社会課題があります。私が小学5年生の時に環境省にて実施された全国河川水質調査では近所の川「樫井川」が全国最下位になり、自分たちが遊んでいる身近な川が日本で一番汚いこと、そして自分の家の家業が地域の環境汚染問題に加担していたことに大きなショックを受けました。そんな状況に私の父が奮起し、分業が常識化していたタオル製造工程を独自一貫化し、また原材料をオーガニックコットンに変更、さらには綿花の生産地であるウガンダとの綿のパイプラインを構築するなど、独自の世界観でタオル製造のこれまでの歴史を変える道を探っていたんです。そんな父親の背中に心を打たれた私は、父と共に二人三脚で「タオル製造の歴大阪・泉佐野市の株式会社スマイリーアース工場にて史を変える挑戦」に挑みたいと強く思いました。家業に就いた私は父がつないだウガンダとの関係を発展させようと英語も話せないままウガンダに一人飛び込み社会人の洗礼を受けました。しかし、大学時代の経験を活かし、相手が誰であろうと実直に心を開いて懐に飛び込んでいったことで、現地の方々も私に対し素直に向き合ってくださったように感じています。「ルーツを知り、責任ある行いをする」という國學院大學が大切にしている日本の魂にならい、正直に自分の役割や責任そして使命と向き合ってくることができたことで、今の私があると感じています。   SDGsの今後について、考えをお聞かせください。2015年に国連で採択されたSDGsがスタートして早7年。ようやく社会が地球温暖化や気候変動という生態系に直接的に関係してくる社会課題に対し認識を持ち始めてきたという印象です。教育の現場にも広まっているのは良い傾向だと思っていますし、これからの世代が「常に胸に手を当てて未来のことを考える。」そんな、当たり前のことを当たり前にできる社会を育てていかなければ、持続可能な社会など到底実現することはできないと私は感じています。原料の仕入れで何度も訪れてきたウガンダでは日本よりさらに気候変動の影響が強く、コットン農家の生活がそこに懸かっているのを直接見てきました。地球上の危機的状況を肌で感じて来ている立場として、私が今後タオル職人として果たすべき責任を果たすという役割は、世界に大きな影響を与えていくと確信しています。これからも一心に「胸を大きく張れる理想のタオル職人像」を私は追い続けたいと思います。受験生の皆さんも、まずは己を知るため、自分の課題に全力で向き合って生きてください!その先に、将来自分の在るべき姿が見えてくるはずです。従事されるまでの経緯を教えてください。 私は一人っ子で家としては9代目なので、実家を継がないと、という意識は陸上競技をする前から正直ずっと頭の片隅にありました。ですが、妥協で選ぶのではなく、箱根を目指していたのと同じ熱量で生き方を選びたかった。実は3年生の時に監督に聞かれたんです、「お前就職どうするんだ」って。それで、「箱根を走ってから考えます。僕は箱根を走るためにここに来たので、まずは一途にやり切りたいんです。」と答えました。念願叶い4年生にして最初で最後の箱根駅伝を走った後に、改めてこれから歩むべき人生についてじっくり考えると、大学4年間競技に集中できたのは家族のおかげであり、また東京の大学へ行く背中を押してくれた家への恩返しも含めて、家業を継ぐという生まれ持った使命に向き合いたいとの考えに自然と至ったんです。  現在の、環境に負荷をかけないタオル奥 龍将さん株式会社スマイリーアース 代表取締役社長2011年、國學院大學文学部日本文学科を卒業。在学中は陸上競技部に所属し、第87回東京箱根間往復駅伝競走大会(2011年)では9区を走った。卒業後は家業を継ぎタオル製造の道へ。株式会社スマイリーアース代表取締役社長、ウガンダ政府公認特命コーディネーター。環境負荷をかけないタオル製造で、2018年の「第7回ものづくり日本大賞」で経済産業大臣賞を受賞。[特 集]本質を問い直し、未来をひらく、國學院の人々

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