國學院大學 入学案内 2024
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KOKUGAKUIN UNIV. 010フと新選組の本をクラス中に貸し出したりと、とにかく熱中していました。  入学後、実際に新選組の研究をするにあたって、印象的だった出来事はありますか?入学早々に行われたオリエンテーションで学部の先生から、「大河ドラマの影響で『卒論は新選組を!』と言う人が増えたが、やらせるつもりはない」と言われたことを覚えています。しかし新選組を学ぶために入学した私は、研究題材として認められるほどに研究をしてやろうと、むしろ心が奮い立ちました。そんなときに出会ったのが吉岡孝先生です。日本近世史が専門で、新選組について著書も出されている先生の授業を受け、研究には対象とする事象以外にも幅広い知識が必要なのだと実感しました。高校までは歴史全般というよりも新選組が好きだったのですが、それ以来興味の範疇外のことも積極的に学ぶように。國學院大學には、史実にリアリティを感じるような、面白い授業をしてくださる先生が多く、ますます興味の幅が広がりました。   研究以外では、どのような学生生活を過ごされましたか?図書館に入り浸り、寝ても覚めても本を読む生活でした。せっかく学ぶ機会があるのだからと、卒業に必要な科目だけでなく、できる限り多くの科目を履修し、授業中に薦められた本はなるべく読むようにしていました。さまざまな授業を受ける中で出会い、ともに学びを深めた友人とは、今でも一緒に史跡を巡ったり、気になっていた史資料を集める手伝いをしてもらったりと立場や状況が変わっても仲良くしています。  小説を執筆し、デビューするまでの経緯を教えてください。在学中は小説を書かず、とにかくインプットに注力していました。小説家を目指していることはお世話になった吉岡先生にも公言していませんでしたが、卒業論文を提出した際に先生から、「文章がうまい。説得力がある」と言っていただけたことは、文章を書く自信につながりました。実際に小説を書き始めたのは卒業後。大好きな小説家である、あさのあつこさんが審査員を務める「ジャイブ小説大賞」に応募しようと、2作同時に書き始め、そのうち1作で大賞を受賞することができました。しかし、出版が決まってからの改稿作業にはかなり苦労し、受賞からデビューするまで1年半ほどかかりました。根気強く寄り添っていただいた担当編集者の方には、本当に感謝しています。  小説家としての仕事のこだわりや苦労、やりがいをお聞かせください。私の小説には史実が多分に含まれています。実際にあった出来事や人物をきちんと描くことで、フィクションの部分にもリアリティや面白さが生まれると考えているからです。大学時代のようにまずは史資料に当たり、読み込むことを徹底しています。物語を紡ぎ出すのは、楽しいことだけではありません。無から有を生み出し、それを育てあげて一つの作品にするまでには、心も体もどんどん疲弊していきます。正直非常に辛いときもありますが、それでもこの仕事を続けるのは、辛苦以上に喜びが大きいからです。作品を書き上げたときやそれが製本されて書店に並んだとき、読者の皆さんに「面白かった」と言っていただけたときに他の何物にも代えがたい幸せを感じます。  最後に、受験生へのメッセージをお願いいたします。私にとって大学時代は、自身の基礎を作り上げた大切な時間でした。将来のことや就職先も大事ですが、私は皆さんに「学びと遊び」の両方を大切にしてほしいです。大学の4年間で得た知識や友人は、何十年経っても皆さんの中に残る財産となるはずです。人生は長く、辛いこともたくさんありますが、心の中に宝物があればきっとさまざまな困難を乗り越えていけます。ぜひ、國學院大學で充実した大学生活を送ってください。ジャイブ小説大賞(現、ポプラ社小説新人賞)受賞作『一鬼夜行』小松 エメル小説家國學院大學文学部史学科日本史学コース卒業。新選組の小説を書くために小説家となる。母方の祖父がトルコ人で、エメルはトルコ語で「強い、優しい、美しい」などを表す。初めて書いた小説『一鬼夜行』がジャイブ小説大賞を受賞(2008年)。シリーズ累計は30万部を超える。新選組を題材にした小説の他、妖怪ものも多数手掛ける。2021年より、コミカライズ脚本を手掛ける『燃えよ剣』が「月刊コミックバンチ」(新潮社)にてスタート。

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