137世界各地の歴史を「縦割り」「横割り」で理解しよう! 世界史の入試問題は、まず4つの大問に分かれます。大問ごとに10〜15題の設問を用意してあります。解答はマークシート方式です。大問ごとに若干の違いはあるものの、全体的な難易度は、高等学校の世界史Bの教科書を超えるものではありません。受験生の諸君は、まずは教科書を中心に勉強を進め、合格点に達するよう努力しましょう。世界史の教科書を作成している出版社は複数あり、出版社ごとに、記述が微妙に異なっています。受験に際しては、この点を踏まえながら、単に教科書を読むだけでなく、用語集・参考書・地図・年表などの助けを借りながら、注意して勉強を進めてほしいと思います。 また、世界史の教科書は、基本的に、各地域・国家の事柄を時代順に記述してあります。受験生の諸君は、その通りに(すなわち、時代順の「縦割り」に)勉強することが多いでしょう。しかし、世界史の入試問題では、必ずしも中国やヨーロッパといった特定の地域または国家の歴史だけが時代順に出るわけではありません。同一の時期の中国とインド、ヨーロッパとアメリカ、さらには東洋と西洋とで、どのようなことが同時に起っていたのか、といった世界各地の事柄を地域や国家という枠組みをこえて(すなわち、「横割り」に)問うものもあります。教科書の内容をそのまま暗記するのではなく、地域・国家ごとはもちろん、政治や文化や経済、あるいは時期や年代といったトピックに応じて柔軟に組み替えることができるよう勉強してください。 最後に、世界史の出題のおおまかな原則を紹介しておきます。世界史の問題は、4つの大問のうち、東洋史から2問、西洋史から2問を出題するのを通例としています。ただし、東洋史と西洋史とがミックスされた問題も、時に出題される場合があるので、注意してください。各設問の中には、用語を選択するだけでなく、歴史的事項に関する説明文の正誤の判断を求めるものがあるので、それぞれの内容を十分かつ丁寧に把握しておくことも必要です。基本事項の幅広い理解や文章力を養う 地理歴史は、マークシート方式ではなく、記述式で解答する史学科B日程入試独自のユニークな出題形式です。史学科の学生としてふさわしい地理・歴史の知識と表現力を試すものになります。出題は日本史2題、世界史2題、地理1題の5題の中から1題を当日選択して解答します。日本史は前近代史と近代史が1問ずつ出題されることが多く、世界史は東洋史と西洋史が1問ずつ出題される傾向にあります。地理は通常1問になります。いずれの問題も、ある程度幅広い範囲を対象としているので、特定のテーマに絞って勉強するのではなく、教科書を幅広く学習しておきましょう。 各問の構成は次の通りです。問1:語句の記述問題、5〜6問。問2:80字以内の簡潔な説明問題。問3:400字以内の論述式問題。問1で問われている語句は、高等学校の教科書の範囲で記述できるような内容であり、特別な受験対策は必要としません。ただし漢字で書かないと減点の対象となるので、正確に覚えておくことが必要です。問2・3においても重要な語句は漢字で記さないと減点対象になり得るので、注意しましょう。問2の説明も高等学校の学習で十分対応できる内容です。問3の論述式問題では、説明文や語句など与えられた素材をもとに、丸暗記ではない歴史や地理の理解や想像力を発揮することが求められます。高等学校で学習した歴史や地理の基本事項を、どれだけ縦断的、横断的に理解できているか、またそれを自分の文章でどのように表現できるかが問われます。7〜10個のキーワードを使用して記述しますが、このキーワードは使用しないと減点の対象になる他、不正確な使用も減点対象となります。キーワードを機械的に挿入するのではなく、正確に理解し、全体の論述の中で適切に使用することを心がけてください。 解答にあたっては、問題冊子などに下書きをしながら推敲し、誤字や脱字がないよう、丁寧に指定された字数で書くことが求められます。また文章表現や、設問の趣旨に沿った内容となっているかも大切なポイントです。日頃から歴史に関する書物を読んで、堅実な分かりやすい文章を書けるように、表現力と理解力とを磨いておきましょう。●政治 例年、「政治・経済」では、大問4題のうち、第1問と第2問が「政治」から出題されています。ここ数年の過去問題では、大問ごとに一定のテーマに関する文章を読み、それに関連して12〜14問の小問に答える形式で、小問ごとに概ね4〜5つの選択肢が与えられています(マークシート方式)。 出題のテーマは、令和5年度入試では「民事裁判」・「民主化の動き」(2月2日)、「日本の安全保障法制」・「民主政治の基本原理」(2月3日)、「法の下の平等(ジェンダー平等)」・「国際紛争と難民」(2月4日)、令和4年度入試では、「精神の自由(思想・良心の自由、信教の自由)」・「民族紛争」(2月2日)、「新しい人権(環境権)」・「議院内閣制」(2月3日)、「国際社会の組織化」・「地方自治」(2月4日)でした。A日程全体としては政治の全分野から偏りなく出題されています。また、大問のテーマが特定の分野に関するものであっても、小問ではそのテーマに限定されることなく、より広い知識が問われることもあります。 「政治」の問題は、教科書を中心に、資料集、用語集の他、時事問題から出題されています。過去に出題されたほとんどの問題は、教科書からの出題です。教科書には多くの重要な事項がぎゅっと凝縮した形で書かれていますので、これを理解し、しっかりと身に付けることが「政治」の勉強の基本となります。まずは用語とその意味をしっかり正確におさえましょう。使用する教科書によって記載されている用語が若干異なっているため、用語集も併用することが助けとなるでしょう。加えて、資料集も大いに活用してください。重要性の高い裁判の事件の概要や判断事項、法律・条約の内容等が、ここ数年の過去の問題で出題されています。これらは、教科書に書かれている重要事項を具体化して考えるうえで大変役立ちます。その際、単に書かれていることを暗記するだけでなく、さまざまな事柄について問題意識を持って読み、日々のニュース報道等と関連させながら、この問題について自分はどのように考えるかも検討してみるとよいでしょう。そうすることにより、より深く問題の重要性を把握して、本質的な勉強ができるはずです。加えて、歴史的な経緯が問われることもあります。時代的背景を理解しつつ、年表を作成するなどして整理しておくとよいでしょう。基本的な歴史を習得しておくことは、大学で専門の勉強をするうえでも役立ちます。さらに、政治的な問題を地図の中で考えることも重要であり、ここ数年、地図上の位置を問う問題が何題か出題されています。 試験に合格するための知識としては教科書・資料集レベルで十分ですが、それ以外に、インターネットで調べたり、関連する書籍を読むことも有益です。実際、その時代においてどのように人間が政治を動かし、制度を生み出してきたかを知れば、無味乾燥な用語の暗記に終わることなく、真の重要性を理解することができるとともに、知識の定着にも役立つでしょう。新傾向の問題が出題された場合に備えて、大学入学共通テストの過去問などに取り組むことも有益でしょう。 現代の政治は、人類の歴史的発展の末に形成されたものであり、かつ、「政治」は世界の政治を対象としています。したがって、「政治」を学ぶにあたっては、教科書の先にある現代の日本社会、世界の国々、そしてその歴史に広く目を向けることが肝要です。日々、国内政治や裁判、国際問題に関し、多くの事柄が各種メディアで報道されています。それらに積極的に触れ、現実の政治に関心を持つようにしましょう。そのように実際の社会と結び付ける意識を持つことが、政治の勉強を面白くし、理解を深める手がかりになります。もちろん、例年、数問出題されている時事問題に関する試験問題を解くにあたって役立つことは言うまでもありません。
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