究める005 水中考古学とは、どのような学問なのでしょうか。沈没船をはじめとする水中の遺跡を調査・研究するのが水中考古学です。現在、日本の水中文化遺産の数は400弱といわれていますが、調査が進んでいるものは一部にすぎません。水中の泥の中では物体が腐食しづらく、食料や衣服など、陸上の遺跡ではあまり発掘されないような遺物が見つかることも度々です。水中遺跡は、歴史を紐解く貴重な資料が、数多く眠る場所なのです。沈没船のような水中文化遺産の発掘が進めば、日本の歴史だけでなく、アジアの船舶史研究などにも貢献できます。実際にこれまでにも、史実の裏付け、あるいは歴史の定説に疑問を投げかけるような数々の発見がありました。 水中考古学の道に進まれたきっかけと、主な研究内容について教えてください。水中考古学との出会いは、琉球大学の教員時代に■ります。それまでは九州の古墳研究に従事していましたが、指導する学生の中に海に関する考古学を学びたいという学生がいたことから、水中考古学研究を始めるようになりました。その後、鷹島海底遺跡(長崎県松浦市)の調査・研究をなさっていた荒木伸介先生の薫陶を受け、先生のお仕事を引き継ぎ、今も続けています。この遺跡には、鎌倉時代の蒙古襲来の遺物が数多く眠っています。2011年に我々が沈没船を発見し、翌年には遺跡の一部が、日本初の水中の国史跡として登録されました。これを機に、日本の水中考古学の在り方が見直されるようになりました。隣国の韓国や中国では早くから国家プロジェクトとして水中文化遺産の調査・研究に力を入れてきましたが、日本では各自治体がその役割を担っています。しかし、水中遺跡の発掘、引き揚げた文化財の保存には莫大な費用や時間がかかるため、一自治体ではなかなか進められない現研究の目指すところは?研究開発推進機構 教授01
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