國學院大學文学部 日本文学科-ガイドブック-
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伝承文学専攻花田植(広島県北広島町)灰汁で煮た端午節供の笹巻(山形県鶴岡市)10がとった「生活の古典」という視点、それは「文学の民俗学的研究」ということができる学問伝統を受け継いでいます。 日本の文化や文学を総合的に理解するためには、文字で書かれた資料を読み解くことと、ことばや行為、技術、感覚、造形などの非文字の領域で受け継がれてきた文化の領域を理解することが必要です。具体的に挙げると、口承で語られてきた昔話や伝説、各地に歌い継がれてきた民間歌謡(民謡)、一年の折り目や人生の節目に行われる年中行事や人生儀礼、村々の誇りと楽しみの対象だった祭礼(お祭り)や民俗芸能、生活を成り立たせている働き方の技術(生業)、人の移動とつき合い(交通・交易)、人びとの信じてきた小さな神仏やおまじない(民間信仰、俗信)、そのほか衣食住のあれこれなど、多岐にわたります。 こうした生活文化の現状をとらえ、その変遷を理解する学問を民俗学といいます。伝承文学は、この民俗学の方法と資料を用いて、日本文化と日本文学を解き明かそうとする学問です。そのためには、実際に現場を歩き、人と会い、聞き書きをすることが大事です。この調査を「フィールドワーク」といいます。伝承文学専攻の学びでは、伝説や祭礼の行われている現場を訪ねて実際にその土地や場所の空気を知り、そうした伝承を持ち伝えている人たちに直接会ってお話を聞かせてもらい、伝承の歴史や細部、意味について教えていただくことが大事となります。 そうして得た各地の資料を、文字に記された過去の資料や、外国も含む他の土地の資料と比較することで、文化の中に位置づけていくことができます。伝承文学の研究領域は、日本文化だけではありません。身近な民俗事象を手掛かりにして、日本文化の、アジア文化の、ひいては人類文化の普遍性まで考えていくことができるのです。 「伝承文学」とはあまり聞きなれない言葉だと思います。伝承されてきた文化や説話を手掛かりに、日本の文化や文学を理解する学問の方法です。伝承文学の考え方は、國學院大學文学部教授で、民俗学者・国文学者・歌人だった折口信夫所属教員一覧飯倉 義之現代民俗論・口承文芸伊藤 龍平説話(文字伝承・口頭伝承)大石 泰夫民俗学と上代文学大楽 和正民俗学服部比呂美民俗学概 要

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