国会議員の女性枠を設けることは「逆差別」になるのか、新型出生前診断は障害者を差別することにつながるのか、身体を売り買いすることはどこまで許されるのか、死刑は「最も重い刑罰」と言えるのか、日本は難民をどの程度受け入れるべきなのか。議論の分断や対立に陥りやすいこうした問いをめぐって、応用倫理学の授業では、まず実状についてしっかりと把握したうえで、差別と単なる区別はいかなる点で異なるのか、心身の自由や移動の自由はなぜ、そしてどの程度保障されるべきなのかに遡って考えていきます。そして、グループディスカッションやレポートの相互採点等を通して、異なる立場に立つ人の主張や前提を理解したうえで、受講生一人一人が「自分の頭で考える」ことを試みます。哲学科の学びの集大成として卒業論文を作成します。そして國學院大學哲学会および哲学研究室の主催で、毎年 3月に哲学科の卒業論文発表会を行います(優秀論 文に選ばれた数名が発表)。教員、学生のほか、哲学科OBも聴講に訪れ、哲学科らしいバラエティに富んだ内容 の発表で、質疑応答でも活発なやり取りが見られます。 以下は、優秀論文に選ばれた論文タイトルの一例です。「仏知とフロー:仏教の教義を再び」「チャールズ・テイラーの宗教的個人・共同体論:「宗教的個人−共同体モデル」から考える」「合理的配慮の意義と問題点」「クローゼットなマイノリティが声を上げるために」「<善>は如何にして可能か?―『存在と時間』における「気づきの倫理」」「悪口とは何であり、それはいつ・どのように悪いのか」「ルーベンスの身体表象―導かれる視線と裸体―」「日本近世の名所絵の景観表現と描かれた暮らし―洛中洛外図(舟木本)を中心に―」「二代歌川広重―幕末・明治の名所絵を彩る花」応用倫理学卒業論文発表会応用倫理学の授業風景卒業論文発表会の風景担当教員: 小手川正二郎
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