り着く蕎麦一杯程の値段でも買えた浮世絵。芝居土産や観光案内、衣装や化粧品の広告など、暮らしに役立つ情報が満載です。描かれた事物を史資料とともに丁寧に読み解くと、当時の暮らしや信仰、思想などが見えてきます。多様な切り口からの解釈を可能にするのは、浮世絵が持つ「余白」の力かもしれません。一方、現代の情報メディアにおいて企業や組織が重視するのは、いかに説明責任を果たすかということ。私の専門であるパブリック・リレーションズ(PR)は、そんな社会背景から生まれた分野だといえます。消費者を含む多様な他者が求めていることを捉え、それに応えるのがPRの本質です。近年その重要性が注視されていますが、実は1950年代の日本社会でもPRは多用されていました。この気付きは、歴史研究における問い直しの大切さを改めて認識させてくれました。過去を新たな角度から捉え直し、独藤澤河河010藤澤教授著『鈴木春信絵本全集』藤澤教授著『鈴木春信絵本全集』の国内外の調査結果を基に浮世絵師鈴木春信国内外の調査結果を基に浮世絵師鈴木春信の書絵本を初めて体系統的に捉えた3冊組の研究書絵本を初めて体系統的に捉えた3冊組の研究書呉服屋(右)と化粧品(左)が描かれた浮世絵。藤澤教授は「鑑賞する楽しみと、生活情報を得る機能が共存している点も浮世絵の魅力」と語る。メディアとしての機能と、見る者の想像力を問う「遊び」をバランスよく含んだ作品といえる。日本を知る。
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